最新記事

米中対立

【南シナ海】中国がASEAN諸国と新たな合同軍事演習を画策

China Wants Asia War Games and U.S. Not Invited: Report

2018年8月3日(金)19時27分
トム・オコナー

中国の人民解放軍は2014年と2016年の「リムパック」に参加したChinese People's Liberation Army/U.S. Department of Defense-REUTERS

<今年の「リムパック」に招かれなかった仕返しか。中国がASEAN諸国を巻き込んでアメリカ抜きの新たな合同軍事演習を始めようとしている>

中国が、東南アジア諸国連合(ASEAN)を新たな合同軍事演習に招待したことが分かった。ただしアメリカは招かれていない。

中国とASEANが策定を進めている南シナ海における「行動規範」草案の中で、中国はASEAN加盟10カ国の首脳に対し、定期的な合同軍事演習への参加と、南シナ海での合同の石油・ガス探査を呼び掛けている。草案を確認したAFP通信が8月2日に報じた。これに最も反発したのはベトナムで、中国はASEAN諸国と領有権を争う海域に人工島を造成し軍事拠点化している、と名指しで非難したが、他の国々はほとんど抵抗しなかったようだ。

AFP通信によれば、中国は草案の中で、合同軍事演習には中国とASEAN以外の第三国の参加は「事前通知の上、どの国からも反対が出なかった場合に限る」、とわざわざ明記したという。

今回の報道は、米中関係が悪化の一途をたどる中、米海軍の主導で世界から20カ国以上の海軍が参加する世界最大規模の「環太平洋合同演習」(リムパック)が8月4日に終了する直前というタイミングで浮上した。アメリカは5月、今年のリムパックに中国を招待しないと発表。ASEANでは7カ国が参加し、東南アジアにおけるアメリカの軍事的影響力を見せつけた。

近代化した中国軍

一方の中国軍は7月31日、中国人民解放軍の建軍91周年を盛大に祝った。かつては中国共産党のゲリラ部隊だったが、今では近代化した巨大な軍隊へと成長した。中国の習近平国家主席は2013年の就任以降、今世紀半ばまでに中国軍を「世界一流の軍隊」に進化させる必要性を強調。アメリカを大いに刺激した。

アメリカは、中国が裏で卑怯なやり方をして政治的にも経済的にも自国の国際的地位を高めようとしている、と非難してきた。とりわけドナルド・トランプ米政権は、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムを含む周辺国が領有権を主張している南シナ海のほぼ全域の領有権を主張する中国と中国軍の活動を激しく批判してきた。

あそこは自分たちの領海だから軍隊を派遣する権利がある、と中国は主張するが、アメリカはそうした主張を認めず、中国による軍事拠点化に断固反対する立場を示すため、南シナ海の人工島近くで「航行の自由作戦」を実施してきた。中国軍がそれに逆らうように5月18日、核搭載可能なH6K爆撃機を南シナ海の複数の人工島や環礁に着陸させた。アメリカはその5日後、中国が南シナ海で「軍事拠点化を続けている」ことを理由に、リムパックへの中国の招待を取り消した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・サウジ、安全保障協定で近く合意か イスラエル関

ワールド

フィリピン船や乗組員に被害及ぼす行動は「無責任」、

ワールド

米大学の反戦デモ、強制排除続く UCLAで200人

ビジネス

仏ソジェン、第1四半期は減益も予想上回る 投資銀行
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中