最新記事

海洋汚染

世界の海洋プラスチック廃棄物の9割は、わずか10の河川から流れ込んでいる

2018年7月12日(木)17時20分
松岡由希子

プラスチック廃棄物の9割がわずか10河川から発生している Plastic Ocean-United Nations-Youtube

<ドイツの研究によると、海洋に流出しているプラスチック廃棄物のおよそ9割が、わずか10の河川から流れ込んでいる>

プラスチック廃棄物が海洋に流出し、海洋生態系を脅かすようになって久しい。現在も、世界全体で1年間に800万トン規模のプラスチック廃棄物が海洋に流れ込んでいるとみられている。

それでは、これらのプラスチック廃棄物は、いったいどこから海洋に流れ込んでいるのだろうか。
独ヘルムホルツ環境研究センター(UFZ)の研究プロジェクトによると、海洋に流出しているプラスチック廃棄物のおよそ9割が、わずか10の河川から流れ込んでいるという。

10の河川とは...

その流出源として挙げられているのが、中国の長江黄河海河珠江、中国とロシアとの国境付近を流れるアムール川、東南アジアを縦断するメコン川、インドのインダス川ガンジス・デルタ、アフリカ大陸東北部から地中海へと流れるナイル川、西アフリカのニジェール川で、いずれの流域も比較的人口の多い地域として知られている。

また、研究プロジェクトでは、プラスチック廃棄物の排出量とプラスチック廃棄物の不適切な処理との相関関係を分析し、流域で適正に処理されていない廃棄物が多いほど、河川から海に流出するプラスチック廃棄物の排出量が増えることを明らかにした。

研究プロジェクトを主導した水理地質学者のクリスチャン・シュミット博士は「これら主要な河川の流域からのプラスチック廃棄物の排出量を半減させるだけでも、海洋汚染の軽減に大きな効果をもたらす」と指摘。「そのためには、廃棄物の分別回収やリサイクルなど、廃棄物マネジメントの改善をはかるとともに、一般市民に向けた啓発活動を積極的に行うことが不可欠だ」と説いている。

matuoka0712a.jpg

世界ではじまったプラスチック廃棄対策

いわずもがな、海洋に流出するプラスチック廃棄物の量を減らすことこそ、プラスチックによる海洋汚染の防止につながる最も有効な対策だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パナマ大統領選、右派ムリノ氏勝利 投資・ビジネス促

ビジネス

財新・中国サービスPMI、4月52.5に低下 受注

ビジネス

バークシャー、手元資金が過去最高 第1四半期にアッ

ワールド

イスラエル、アルジャジーラの活動停止 安全保障の脅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中