最新記事

航空業界

世界の空でパイロット獲得バトル 人手不足で稼働しない航空機も

2018年6月16日(土)10時35分

コストのかかるパイロット訓練と、米国やオーストラリアなどで以前に行われた数年間の新規採用停止が、パイロット志望者が業界に入る障害となっている。業界では今後20年でパイロットを63万7000人増やす必要があると、米航空機大手ボーイングは予想している。

その20年で、航空機の運行量はほぼ2倍に増えるとIATAは推計している。乗務員訓練を手がけるカナダのCAEやL3テクノロジーズは、訓練需要の増加に対応しようと、新たなフライトシミュレーターを製造している。

エアバスやボーイングなどの航空機大手も、訓練などのサービスに事業を広げようとしている。航空機建造よりも利幅が大きくなる可能性があるからだ。

また、自社訓練プログラムの拡充を計画している航空会社もある。地域航空子会社のカンタスリンクで退職率が高くなっているカンタスは、パイロットを確保するため、2000万豪ドル(約17億円)を投じて新たに航空訓練学校を設立すると表明。エミレーツは昨年11月、1億3500万ドル(約148億円)を投じて最大600人の候補生を訓練する航空訓練アカデミーを開校した。

「われわれには社会的責任がある」と、カンタスの国内事業責任者アンドリュー・デービッド氏は話す。「今後も国内外の中小航空会社からパイロットを引き抜くことは可能だが、われわれも(パイロット供給に)貢献する必要がある。それが、ここでの取り組みの1つだ」

<獲得戦争>

他の航空会社は、海外から採用せざるを得なくなっており、中国との競争にさらされている。経験豊富な外国人機長の需要が高い中国では、航空各社が最高年俸31万4000ドルを免税で提示している。

「パイロットが不足しているというよりは、必要とするパイロット、特に経験豊富なパイロットを呼んできて働き続けてもらうためのコストが高くなっている」と、アジア太平洋航空会社協会のアンドリュー・ハードマン事務局長は言う。「獲得戦争が起きている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中