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世界の空でパイロット獲得バトル 人手不足で稼働しない航空機も

2018年6月16日(土)10時35分

平均賃金が比較的低い国では、パイロットは他の職業に比べてずっと豪華な報酬を提示されている。パイロットは、国境をまたいで移動することが可能な職業で、航空業界の共通言語である英語を話す必要があるからだ。

スリランカ航空では、湾岸諸国の航空会社へのパイロット流失が続いていると、エミレーツのパイロット出身であるラトワッテ最高経営責任者(CEO)はロイターに明かした。

「そこそこ高い給料を支払っている。辞めていくパイロットは、中東に転職する人が多く、われわれが提示する給与水準は、湾岸諸国のそれに非常に近づいている。違いは、スリランカが拠点だということだけだ」と同CEOは語る。「ライフフスタイルは大変良いものだ」

タイの航空大手バンコク・エアウェイズは、パイロットの賃金を引き上げ、手当ても拡充して国際線の外国人パイロットを採用していると、同社のPuttipong Prasarttong-Osot社長は話した。

パイロットの労働組合は、人手不足に乗じて、組合員のさらなる待遇改善を求めている。

カナダの定期航空操縦士協会(ALPA)のダン・アダムス会長は、カナダのパイロットは全体的に昇給を得ているものの、米大手航空会社の方がエア・カナダより給与水準が高いと語る。

「航空会社は、適任のパイロット採用が難しくなっている」と、アダムス会長は話した。このため、航空各社は賃金を引き上げている。「パイロットは、給料の良いほうに移ってしまう」

同会長は、1000人前後のカナダ人パイロットが、エミレーツなどの外国航空会社で操縦かんを握っているとみている。

自国で最優良の雇用主と評価されている、カンタスや英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)などの航空会社は、まだパイロット志望者の不足に悩まされてはいない。

BAを傘下に持つインターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)のウォルシュCEOは、業界全体を見れば「ピンチポイント」の兆候があるものの、パイロット不足が起きているとは思わないと言う。

「私がパイロットに復帰する事態になったら、パイロット不足だと言えるだろう」と、アイルランドのエアリンガスのパイロット出身のウォルシュCEOは語った。

(Jamie Freed記者, Chayut Setboonsarng記者、Allison Lampert記者、翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)



[シドニー/バンコク/モントリオール 6日 ロイター]


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