米朝首脳会談、トランプの耳に囁かれる「平和条約」という落とし穴
信じられるだろうか
しかし、こうしたトランプ大統領の試みは意義あるゴールとなるかもしれない。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金委員長による南北「終戦」に向けた最近の合意とも一致する。
文大統領が米朝首脳会談のためにシンガポールに向かうとの憶測がメディアで飛び交っているが、韓国当局者は同会談が実施された後に3者会談を検討していると強調した。
また、平和条約という考えは、リアリティー番組のスターだったトランプ大統領の心をくすぐるのかもしれない。アメリカの歴代大統領が成し遂げられなかった成果を上げることができるからだ。ノーベル平和賞を受賞するかもしれないというトランプ支持者の期待も高まる。
「朝鮮戦争の終わりについて協議するなど信じられるだろうか」。トランプ大統領は1日、感慨深げに記者団にそう語り、会談が「歴史的に」重要な出来事になると述べた。
だが、歴代の米政権がそのような合意を提供せず、あるいは北朝鮮がずっと求めてきた首脳会談を受け入れなかった理由は、北朝鮮が核軍縮に応じなかったことにある。
米当局者は、長距離ミサイル発射実験の停止や核実験場の閉鎖に関する金委員長の最近の発表を歓迎する一方、こうした措置は覆される可能性があると話す。
トランプ大統領が実際に平和条約に署名する可能性を探るかどうかは明らかではない。それには長期にわたる交渉、あるいは詳細な条約の基礎となり得る両国によって合意された政治的声明が必要となると専門家はみている。
休戦協定を完全な条約に「格上げ」することはまた、北朝鮮や朝鮮戦争時に国連軍を指揮していた米国だけでなく、北朝鮮と共に戦った中国など全ての当事国の署名が必要となる可能性が高い。
中国外務省は「平和のメカニズム」に至る努力を支持するとしているが、中国共産党の機関紙である人民日報系の環球時報は、「合法的かつ歴史的な地位を確かなものとするため」いかなる平和条約であっても中国は調印国とならなければならないと主張している。
どちらにせよ、米国にとって、それは大きな意味合いと、意図せぬ結果を招く可能性がある。
「金委員長は、韓国の駐留米軍を巡る交渉を長引かせることを何よりも望んでいる」と、オバマ前政権で東アジア・太平洋担当の国務次官補を務めたダニエル・ラッセル氏は指摘する。
「だが北朝鮮がシンガポールの会談で頭にあるのは、米朝首脳が平和の維持や恒久的な和平に向けてコミットしているという漠然とした宣言という手っ取り早い勝利を得ることだろう」
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
[ワシントン 5日 ロイター]
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