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「北の急変は中国の影響」なのか?──トランプ発言を検証する(後編)

2018年5月21日(月)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

トランプ米大統領 Kevin Lamarque-REUTERS

前編に関しては、5月20日付のコラム<「北の急変は中国の影響」なのか?――トランプ発言を検証する(前編)>をご覧いただきたい。以下に示すのは、5月18日に元中国政府高官を独自取材した結果である。Qは筆者で、Aは元中国政府高官。

北朝鮮が改革開放をしてくれないと旧ソ連のように崩壊する

Q:トランプ大統領が、北朝鮮が米朝首脳会談を再考する必要があると言ったのは、「金正恩の大連訪問以降のことなので、習近平が金正恩に影響を与えたのではないか」と言ったことを、あなたはどう思いますか?

A:バカバカしい!習近平はそんな愚か者じゃない!考えてみてくれ、いま中国は中米貿易摩擦で大変なんだ。劉鶴がアメリカに行ったばっかりだろう?

Q:ええ、そうですね。劉鶴に関しては、私もそう思います。では、中国は北のこの発言に関して、どう思っていますか?

A:また始まったと思っている。米朝が対話で問題を解決してくれないと、困るのは中国だ。

Q:北が改革開放を進めてくれないと困るからですか?

A:その通りだ。中国は鄧小平の時代から、ずうっと朝鮮(筆者:北朝鮮のこと)に「改革開放をしてくれ」と言い続けてきた。そうじゃないと、ソ連のように社会主義体制が崩壊する。朝鮮の社会主義体制が崩壊すると、中国にも悪影響をもたらす。だから、いつまでも核やミサイルの威嚇をしないで、いい加減で対話路線に入り、経済開発に全力を注いでほしいと言い続けてきた。中国にとって、ようやく米朝首脳会談が行われることは喜ばしいことだ。特に今年は改革開放40周年記念。そのために中国としては特に朝鮮に改革開放を進めてほしいと願っている。

Q:では、金正恩の中国再訪は、中国から言い出したのですか?

A:違う!さっきも言ったように、中国は劉鶴を派遣して、なんとか中米貿易摩擦を回避しようと必死で動いていた。今だけは朝鮮問題に深く関わりたくないと思っていた時期だ。金正恩が大連を訪問したのは5月7日。まさにその日にホワイトハウスから劉鶴一行の訪米を受け入れるという返事が来た。そんな時期に、こちらから金正恩に訪中してくれなどと頼まなければならない理由がどこにあるのだ。

Q:北朝鮮カードを使って、アメリカを牽制するという要素はありませんでしたか?

A:そのような愚かしい推測をするのなら、この話はここまでにしよう。

Q:分かりました。では言いません。その後14日に、北朝鮮の高官たちによる代表団が訪中しましたよね。

A:ああ、そうだ。

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