最新記事

内部告発

中国の抗日戦争記念館元職員・方軍氏の告発──同館館長らの汚職隠蔽

2018年5月14日(月)13時28分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

「中国共産党の本質は今も昔も変わっていない!」

 「中国共産党の本質は、今も昔も変わっていない!」と方軍氏は怒りを露わにする。

 彼は筆者がアメリカのVOA(Voice of America)の番組に出演した時に話した言葉を、ネットで視聴しているとのこと。そして続けた。

──自分は歴史のことは分からない。だから『毛沢東 日本軍と共謀した男』の中に書いてある史実に関しては、正確なコメントをすることはできない。しかし、中国共産党の歴史における役割も今の姿勢も、結局は何も変わっていない。あなた(遠藤)は歴史的観点から中国共産党の欺瞞を暴いた。私は腐敗という現場から、その欺瞞性を訴えている。

日中戦争の時に中国共産党は日本軍と結託して強大化し、日本軍を利用して蒋介石・国民党軍を倒したと、あなたは書いている。それとは次元が違うかもしれないが、「抗日記念館が日本人におもねり、日本人から利益を得ている」ということに類似のものを感じる。少なくとも中国共産党は人民を騙し、人民の血と肉を食い物にしていることに変わりはない。

欺瞞性は今も昔も変わらない。腐敗は蔓延し、腐敗のないところを見つけることは困難だ。それを訴えようとしたら、こうして解雇されるのだ。それでいて習近平政権は腐敗撲滅を政権スローガンにしている。この欺瞞性を、どうか訴えてほしい。あなたに全てを委ね、全ての希望を託したい。

「中国大陸という孤島」で闘う人たちへ

以上が方軍氏からの訴えである。もし筆者のコラムが海外の多くの人に知られれば、中国政府はその時になって初めて動くだろうと、方軍氏は期待している。

なお、中国共産党は「日中戦争の時に勇猛果敢に日本軍と戦ったのは中国共産党軍で、日本軍を敗戦に追いやり中華人民共和国を建国した」という虚偽の歴史(抗日神話)を創りあげ、何とか中国共産党による一党支配体制を維持しようとしている。したがって、腐敗行為を行なったのが、その抗日戦争記念館の館長だったりすると、「抗日神話」が崩壊する。そのことを恐れて、方軍氏の口を封じようとしたのではないかと筆者には映る。

拙著がこんな形で、「中国大陸という孤島」で民主と自由を求めて闘う人たちの何らかの役に立ち、勇気とチャンスを与えることができたのだとすれば、少なくとも書いた価値はあったということかもしれない。

習近平政権は外からは盤石に見えても、一部の一般人民には不満が渦巻いている。こういった人たちの受け皿となって真実の声を拾い、国際社会に伝えていくことができればと思っている。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行融資、3月も低調 家計向けは10年ぶり

ビジネス

英アングロ、BHPの買収提案拒否 「事業価値を過小

ビジネス

ドル一時急落、154円後半まで約2円 その後急反発

ビジネス

野村HD、1―3月期純利益は前年比7.7倍 全部門
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中