最新記事

南北首脳会談

韓国、5月1日から対北朝鮮宣伝放送施設を撤去 「板門店宣言」初の履行措置

2018年4月30日(月)11時52分
ニューズウィークウェブ編集部

韓国国防部は、南北首脳会談の「板門店宣言」の履行措置として、5月1日から軍事境界線一帯に設置した対北朝鮮向け宣伝放送設備を撤去する発表した。パジュで2004年6月撮影(2018年 ロイター/You Sung-Ho)

韓国国防部は、南北首脳会談で発表された「板門店宣言」の履行措置として、5月1日から軍事境界線(MDL)一帯に設置された対北朝鮮向け拡声器宣伝放送設備を撤去すると、30日発表した。

ニュース1などの韓国メディアによると、韓国国防部のチェ・ヒョンス報道官は30日午前の記者会見で、「5月1日から MDL一帯で拡声器放送とビラ散布をはじめとするすべての敵対行為を停止する。これは敵対行為についての設備を撤廃することにした板門店宣言を遵守しようとする行動の一環だ」と述べた。

27日に板門店で行われた韓国の文在寅大統領と、北朝鮮の金正恩国務委員長による南北首脳会談では、「南北は完全な非核化を通じて核のない韓半島を実現するという共通目標を確認した」とする「板門店宣言」に署名した。

その中では「半島における軍事的緊張状態を緩和し、相手に対する一切の敵対行為を全面的に中止する」「5月1日から軍事境界線一帯での拡声器放送やビラの散布などすべての敵対行為を中止し、今後、非武装地帯を実質的な平和地帯にしていく」と明記されており、今回の国防部の発表はそれに沿った措置と言える。

韓国は、1963年5月1日、黄海側MDL一帯で初めて対北朝鮮拡声器放送をした。その1年前から北朝鮮が対韓国向け拡声器放送を開始したことに対する対抗措置だった。

国防部が5月1日から拡声器放送設備撤去作業を開始すれば、まさに55年前韓国軍が拡声器放送を始めた日に宣伝放送はその役割を終えることになる。

もっとも、拡声器による放送は今回の南北首脳会談に向けて4月23日0時から全面中断しており、北朝鮮側も対韓国向け拡声器放送を中断していた。

チェ報道官は「前回の拡声器放送中断と同じく、韓国側の措置に北朝鮮側も拡声器撤去で呼応するものと期待している」と述べた。

また「板門店宣言」にある「ビラ散布を停止」については、「韓国軍としては、2010年以降はビラ散布は行っていなかった。民間団体のビラ散布をどう防ぐのか、もう少し議論してみる」と話した。

チェ報道官はまた「韓国軍はしっかりした軍事態勢を維持した中で"板門店宣言"を履行するためのフォローアップに万全を期している」と付け加えた。

数週間後にも開催されると言われる史上初の米朝首脳会談を前に、金委員長がどこまで「板門店宣言」を履行するのか、そのスタートは拡声器放送設備の撤去からとなりそうだ。

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送任天堂、今期中にスイッチ後継機種を発表へ 営業

ワールド

英軍関係者の個人情報に不正アクセス、中国が関与=ス

ビジネス

植田日銀総裁が岸田首相と会談、円安「注視していくこ

ビジネス

英建設PMI、4月は約1年ぶり高水準 住宅部門は不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中