最新記事

航空業界

ANA、東京五輪へアジア中距離線のLCC攻勢 傘下のピーチにバニラ統合

2018年3月22日(木)19時30分

3月22日、ANAホールディングス(HD)は、傘下の格安航空会社(LCC)で連結子会社のピーチ・アビエーションと完全子会社のバニラエアを統合すると発表した。写真はピーチのチェックインコーナー、成田空港で2014年7月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

ANAホールディングス(HD)<9202.T>は22日、傘下の格安航空会社(LCC)で連結子会社のピーチ・アビエーション(大阪府泉南郡)と完全子会社のバニラエア(千葉県成田市)を統合すると発表した。2018年度下期から統合に向けたプロセスを始め、19年度末をめどにピーチの基盤へバニラを統合させる。ブランドはピーチに一本化し、規模拡大と効率化を図る。

前期の売上高はピーチが約517億円、バニラが約239億円。両社を合算すると約756億円で、LCC国内首位のジェットスター・ジャパン(約528億円)を上回り、最大となる。統合後は50機超の機材と国内・国際線合わせ50路線以上の規模となる見込みで、20年度には売上高1500億円、営業利益150億円規模を計画する。

ANAHDは20年をめどにアジア全域でLCCによる片道7時間から9時間以内の中距離路線を展開する方針を打ち出しており、統合後の新ピーチがアジアでの中距離路線の展開計画を進める。バニラも台湾や香港などに路線を持つが、ピーチのほうがアジアで多く運航している。国際線での外国人比率が7割と多く、海外での認知度がより高いピーチブランドでアジア市場を攻める考え。

同日会見したANAHDの片野坂真哉社長は、20年の東京五輪を控えて競争環境が激化しており、海外勢も活発に動いていることが「刺激になった」と述べ、以前から統合は検討していたが、同社がピーチを連結子会社化した昨年2月の時から「(統合への)思いが強くなった」と説明。LCC2社の業績が改善する中、訪日観光客需要、地方創生などの機運も高まっており「ベストなタイミングと判断した」と語った。

会見に同席したピーチの井上慎一最高経営責任者(CEO)も「厳しい競争に生き残るための選択」と指摘。バニラの五島勝也社長も両社を統合し、競合と「伍(ご)して勝負していく体力が必要」と述べた。ピーチは関西空港、バニラは成田空港を拠点としており、重複も3路線と少なく、統合効果は高いとみている。

LCCはパイロットや整備士などの人手不足が成長のボトルネックとなっており、ピーチの井上CEOは、統合しても「その懸念はなくならない」と話す。ピーチは今後も大阪を拠点とするが、井上CEOは、首都圏マーケットが大きく、アジアでの中距離線展開に備え「採用競争力を担保する意味でも、一部機能を東京に移すかもしれない」と述べた。

(白木真紀)

[東京 22日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中