最新記事

テロ組織

「選ばれし者」アルカイダの次期指導者はハムザ・ビンラディンで決まり?

2017年9月13日(水)20時45分
ジャック・ムーア

20人以上もいるビンラディンの子供のなかで、なぜハムザが後継者に担がれているのかは不明だが、ハムザはビンラディンのお気に入りだったという見方がある。ハムザの指導者としての資質もほとんど知られていないが、3年以上ISISに注目を奪われてきたアルカイダにしてみれば、ビンラディンの息子というだけで十分なようだ。

ハムザについてわかっているのは、子どもの頃にアルカイダのプロパガンダビデオに登場していたこと。幼少期は、スーダンとアフガニスタンで父と過ごしたことも分かっている。両国は、1990年代にサウジ国籍を剥奪された父ビンラディンの亡命先だった。ビンラディンは2011年にパキスタン北部アボタバードの潜伏先で米海軍特殊部隊に殺害されたが、幼少期を父親やその側近とともに過ごしたハムザは、父親の過激思想を継承しているようだ。

ザワヒリにはビンラディンやISISの最高指導者アブバクル・バグダディのようなオーラがなく、年老いたリーダーだというのが、欧米や若いジハーディストの間の評価だ。ザワヒリよりハムザの方が、ビンラディンの血を引くという理由だけで、欧米からより大きな注目を集めている。民間ウェブサイト、ロング・ウォー・ジャーナルによれば、ハムザは5月の声明で「ユダヤ人」と「十字軍」への攻撃を呼び掛け、アルカイダとその信奉者が優先すべき攻撃対象のリストも示した。

「ユダヤ人と十字軍を狙え」

ハムザは、ジハーディストの標的は「神聖なイスラム教や予言者ムハンマドに背く者すべて」であり、「そこら中のユダヤ人を狙え」と言った。もしユダヤ人が見つからなければ「アメリカの十字軍戦士」を攻撃しろとも言った。ハムザは声明で、ロシア(旧ソ連)が1980年代にアフガニスタンに侵攻したことを理由に挙げて、ロシアも攻撃するよう呼び掛けた。当時ムジャヒディンと呼ばれるイスラム聖戦士としてゲリラ戦に参加した父ビンラディンにとって、ロシアは侵略者であり敵国だったからだ。「ロシアに過去の清算をさせてやれ」とハムザは言った。

ハムザは、父の出身国であり9.11テロへの関与も疑われるサウジアラビアの王室も批判した。「我々の土地であるサウジアラビアはサウジ王室に占領されている」とハムザは言った。「サウジアラビア軍がアラビア半島とイスラム教徒に属するあらゆる土地から撤退するまで、サウジアラビアを攻撃し続ける」

今回アルカイダがハムザのメッセージを公表したのは、ISISが弱体化する隙を狙って、再び自分たちの存在感を取り戻すためだ。ISISはイラクやシリアの戦闘で次々に敗れ、かつての支配地域を大幅に失っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中