最新記事

映画

外国語映画初のアカデミー作品賞受賞『パラサイト』 ポン・ジュノの栄光を支えた二人の翻訳者とは

2020年2月12日(水)12時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

アカデミー賞授賞式でオスカーを手にするポン・ジュノ監督とシャロン・チェ Mario Anzuoni - REUTERS

<アカデミー賞史上初、外国語映画で作品賞を受賞した話題作の大ヒットには、エンドロールにクレジットされていない二人のサポートがあった>

2月9日の夜、第92回アカデミー賞授賞式が行われた。粒ぞろいの素晴らしい作品がノミネートされた中、注目を浴びていたのは韓国映画『パラサイト 半地下の家族』だった。ここに来るまで、カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールや、ゴールデングローブ賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞など名だたる映画賞の主要タイトルを総なめにしてきたこの怪物作品。今回6部門でノミネートされたアカデミー賞では一体どれだけ受賞することができるのか、韓国映画、いやアジアの映画史上初めての出来事に、多くの人が固唾をのんで受賞式を見つめたはずだ。

結果は、皆さんもうご存じのことだろう。確実に取るだろうと言われていた国際長編映画賞はもちろん、監督賞、作品賞、脚本賞の4つの栄冠に輝いた。今年で101年となる韓国の映画史を塗り替えたのはもちろんのこと、外国語映画(非英語作品)がアカデミー賞作品賞を受賞したのは、92年の歴史上初の快挙である。

このように、韓国から世界の人々へ『パラサイト』という素晴らしい作品が伝わり、認められるようになったのは、監督、俳優、多くのスタッフの力はもとより、この作品にかかわったすべての人々のおかげだ、今回は、そんな影の立役者を紹介したい。

CNNも認めたポン・ジュノ監督の「アバター」

映画「パラサイト」が世界から注目されるようになるにつれ、海外の映画祭はもちろん、舞台挨拶やTV番組にも出演することが多くなったポン・ジュノ監督。彼の出演が増えるたびに同じように注目を集めるようになっていったのが、もはやポン・ジュノ監督専属ともいえる通訳担当のシャロン・チェ(韓国名최성재、チェ・ソンジェ)さんだ。

ボン・ジュノ監督が、彼女のことを「ほぼ自分のアバター」だと称するほど、韓国語で話す監督の意思をより的確に通訳している。今回のアカデミー賞授賞式でも、監督の横にぴったりと連れ添い、脚本賞、国際長編映画賞、監督賞、作品賞と4度も舞台に上がり、世界の名だたる映画人たちを前にしても臆することなく堂々とした通訳ぶりで注目された。

韓国のネット上ではすっかり有名人となったシャロン・チェさんは、若干24歳。去年5月に行われたカンヌ映画祭からポン・ジュノ監督の通訳として参加し、その後、監督と一緒に世界を飛び回っている。アカデミー賞作品を受賞したポン・ジュノ監督が「明日の朝までお酒飲みまくる準備はできた」とスピーチすると、授賞式のニュースを報じたCNNは「とてもよく頑張った通訳のチェさんにも飲ませてあげてくださいね」と付け加えて話題となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

中国、自動車下取りに補助金 需要喚起へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中