最新記事

映画

ルコント久々の大人の恋愛物語『暮れ逢い』

2014年12月19日(金)17時15分
大橋希

──『暮れ逢い』は「欲望」についての映画だというが。

 フリドリックは恋をしてはいけない女性を好きになり、そのことを誰にも言えない。愛が募り、欲望がどんどん募っていく。僕は原作の小説を読んで、その姿にとても心を引かれた。

 ロットとフリドリックは離ればなれの運命になり、2年間待つことを約束する。ツバイクの小説と同じように僕はこの映画で、「相手と一緒になりたいという欲望は時間に打ち勝てるのか」という問い掛けをした。ただ小説の結末はすごく悲しいから、僕はちょっと楽観的なものに変えさせてもらった。

──その結末だが、もう少し先の展開が見たいと思った。

 それは次回作で(笑)。気持ちは分かるが、ツバイクの小説があそこで終わっているのに、僕が続けてしまえば大きな裏切りになるかもしれない。それに言ってみれば、彼らがあの先どうなるかは僕らには関係ない。面白いのはあそこまでなんだ。

──欲望を持ちつつ相手に簡単に触れないというのは、20世紀初頭という時代背景もあるだろうか。

 確かに、欲望をスピーディーに消費しようとする現代と違い、あの頃はもう少し相手を大切にするとか、すぐに自分のものにはせず前段階を踏むというのはあっただろう。でも、そうした感情は今も時代錯誤ではないと思う。最初の日に体を許す女性を尊敬できるだろうか?

──そう思うのは個人的な体験から?

 そうだね。僕自身はいわば「階段を上るような時期」のドキドキ感や陶酔感は、その行為以上に感じるものだと思ってる。

──何年か前に引退をほのめかしたが、今はもうその気持ちはない?

 どうしてそれを言ったのかな。まあ、理由は分かっているんだけど......。

 理由? ただ疲弊していた(笑)。1本か2本、興行的にあまりヒットしなかった作品があって、ちょっとうんざりしていた。

 今までたくさんの映画を撮ってきたが、どの作品に対しても全身全霊を傾けてきた。手抜きをしたり投げやりな気持ちで臨んだことはなくて、絶対にいい作品になると信じて、いい作品になったと思ってやってきた。だからヒットという形でご褒美をもらえないと、すごくがっかりする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中