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対談

バズるにはどうしたらいい? 面白いってどういうこと?【田中泰延×岩下智】

2019年8月23日(金)16時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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「関西では、いちばん悲惨なことをした人が、いちばんヒエラルキーが上」と語る田中氏 Newsweek Japan

田中 確かに魅力がないと人を惹きつけないけど、ウンコを踏んで臭い人はなんで面白いんやろ?

岩下 本に書いた話で言うと「差別」っていうことかなと思うんです。つまり、ある対象に対して、自分とは違って「様子がおかしい」「滑稽である」「ヘンテコである」と感じるもの。そういう面白さって結構たくさんあるんですよね。変なことをしているとか、変な顔をしているとか。

関西のお笑いって、そういうところが特に面白いと思うんです。お笑いの基本としてよく言われる、面白い顔と、面白い動きと、面白い言葉ですよね。

田中 それは、ウンコを踏みに行って「クサッ」ていう顔をするところまで含まれているっていうことだと思うけど、ただ、大阪人の僕に言わせたら、それを自分がやらなきゃダメなんですよ。関西では、いちばん悲惨なことをした人が、いちばんヒエラルキーが上になる。

それと、「誤解されたままにする」。リカバーしちゃダメなんです。「あいつは頭が変だ」という状態のまま家に帰らなきゃいけないんです。

みんなが面白いと言うものは面白くない

岩下 なるほど。以前お会いしたときに聞いたラッコとカワウソの話もそうですよね?

田中 あれは単なる事実です。これは大事な話ですから、ちゃんと対処しておきたいので説明しますと、カワウソが体長50センチを超えたら、ラッコと呼ばれます。そして、ラッコが体長1メートルを超えると、ビーバーと呼ばれます。出世魚みたいなもので、生物学的にはまったく一緒なんです。

その証拠に、カワウソは英語で「Otter」、ラッコは「Sea otter」と言います。成長の過程でだんだん大きくなって、川が狭くなったから海に出ただけなんです。それがひとつの生物の真実なんです。ハマチがブリになるのと同じです。

これは何度も言っているけど、なかなか信じてもらえなくて......。僕はガリレオの気分ですよ。コペルニクスも同じ。真実を述べる者は無視されるんですよね。

岩下 この話を聞いたあと、一応ググりました(笑)。でも、世の中にはやっぱり間違いは正さなきゃ、指摘しなきゃっていう人も結構いて、ツイッターで炎上の元になるようなコメントを書いてしまうのも、実は真面目な人なんですよね。

SNSで面白いことを投稿しようとしている人も多いと思うんですけど、一方で、何でも大真面目に非難する人がいるから、面白いことを言えなくなるっていう風潮があると思うんです。CMや広告は特にそうで、「コンプライアンス」っていう言葉がよく使われるようになったあたりから、どうしてもみんな守りに入りがちですよね。

田中 この間テレビドラマを見ていたら、銀行強盗がシートベルトして逃げていましたからね。「急いで逃げろー!」って言いながら車に乗って、カチャって。これ、おかしいよね。

もちろん企業が炎上を恐れるのは分かるけど、そういう制約が多くなり過ぎて、広告も、広告業界にいる人も面白くなくなってきているんですよ。どんどん叩かれて、その結果、おしゃれに逃げる。

岩下 広告に関してもうひとつ思っているのは、みんなが面白いって言うものは、実はあまり面白くないということです。角が取れてツルッツルになってしまう感じで、気付くと普通になっている。予定調和に収まってしまうんですよね。

それってなんでだろうって考えると、みんなが面白いって言うってことは、面白くない人まで面白いって言っているからなんですよね。

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