最新記事

キャリア

起業のサポート本 お荷物社員の活用法から燃え尽き対策まで

2018年3月27日(火)20時46分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

成功に必要なのは「自己改革」

本書を活用するにあたっては「徹底的に自分自身に正直になってほしい」とパワーは述べている。さらに、学んだことを「実行しなければビジネスは進歩しない」とも警告する。


「この新しい世界で起業家であるあなたが競争を勝ち抜く方法はひとつしかない。それは自己改革だ。あなたはより強く、賢く、しなやかなビジネスリーダーへと進化しなければならない。顧客をワクワクさせ、従業員を鼓舞し、チャンスをつかみ、成長することをやめてはならない」(2ページより)

会社を成功へと導くためには、経営者自身が生まれ変わる必要がある。だからこそ、パワーが真っ先に投げ掛けるのは「自分自身について考えるべし」という課題だ。人生の目的や、なぜ成功したいのかを再確認することに最初の2週間を使い、その後の数週間もメンタルに関するアドバイスが続く。

そして全体を通して、「会社をどう経営していくか」といった戦術よりも、「起業家としてどう成功するか」に重点が置かれている。日々のモチベーション管理からリーダーシップのレッスン、さらに「自律と決意」「強い自分を奮い立たせる」など、困難な状況を乗り越えていくための心構えだ。

4カ月が経過した頃には「ひと息つく」をテーマとする週がある。そこから3カ月後には「燃え尽き症候群」と「よくない習慣」が続く。経営者が疲労困憊していては会社もうまく回っていかない。絶妙なタイミングでのアドバイスは、まるで伴走者の声のようにも聞こえてくるだろう。

「ビジネスと家庭の両立」が第33週(8カ月目)に用意されているのも、ちょうどそれくらいで悩みが生じてくるという暗黙の注意喚起かもしれない。

「いつか考える」よりも今日考えよう

もちろん、経営やマネジメント、マーケティングといったビジネスの中心的問題にも多くの週を使い、日々課題が用意されている。例えば、「無理なく導入できる顧客特典プランを考える」「価格について顧客に切り出す際の新しい方法を考える」「全従業員に報酬を与える」といったものだ。

さらに、「困った人の対処法」「気難しい顧客」などの人間関係の問題に加え、「交渉の知識」や「スピーチのコツ」といった、より実践的かつ経営者には欠かせないノウハウも紹介されている。具体的な課題としては......

●チームで"お荷物"になっている人をやる気にさせる方法を考える
●誰かをたじろがせる
●感動的だと思うスピーチを鏡の前で声に出して言ってみる

といったものが並んでいる。

このように著者が日々投げかけてくる課題は、ひとつひとつは小さいが、だからこそ多忙な起業家でも一日あれば十分にこなせるようになっている。反対に、こうした細部を毎日いくつも同時並行で考えるのは無理がある。だからと言って棚上げしたままでは、成功への道は遠のいてしまう。

起業家には「いつか考えなければいけないこと」が山ほどあるが、その「いつか」を教えてくれるのが本書だ。たとえ新人起業家でなくても、また本書の構成どおりに進めなくても、起業家として、リーダーとして考えるべきことのToDoリスト、あるいはガイドラインとして活用できるだろう。


『全米最速成長企業のCEO直伝 356日スタートアップ大作戦!』
 レット・パワー 著
 前田雅子 訳
 CCCメディアハウス

【お知らせ】
ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮情勢から英国ロイヤルファミリーの話題まで
世界の動きをウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率60%に小幅上昇 PCE

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中