最新記事

技術流出

トランプ、半導体めぐりオランダに圧力 狙いは中国への技術流出阻止 

2020年1月15日(水)09時16分

米国務長官がオランダ首相に圧力

また、3人の関係者によると、ASMLとしては営業上の理由から輸出を推進する必要に迫られていたものの、ポンペオ国務長官がルッテ首相に直接、製品輸出を阻止するよう促したという。

過去20年間にリソグラフィ市場で圧倒的シェアを誇るようになったASMLは、株式時価総額が1100億ユーロを超え、オランダ産業界の花形である。

ポンペオ国務長官は昨年6月3日、ハーグで記者団に対し「我々が求めているのは、我々の同盟国・友好国が、共通の安全保障上の利益を損なう行動を取らないように、ということだ」と語ったが、半導体製造機器については特に触れなかった。

米国務省にコメントを求めたが、回答は得られていない。

6週間後、ホワイトハウス訪問中のルッテ首相は、情報機関による報告書の写しを与えられた。トランプ米大統領がホワイトハウスでルッテ首相と会談した際に、ASMLの機器輸出問題に触れたかどうか、ロイターでは確認することができなかった。

オランダ外務省が公開している輸出ライセンスに関する一般向けデータベースによれば、ASMLが取得した輸出ライセンスは活用されないまま2019年6月30日に失効。その後、更新申請の通常の審査期間である8週間を経ても、新たなライセンスは付与されていない。

オランダ外務省のイレーネ・ゲリッツェン報道官は、軍民両用テクノロジーの輸出ライセンスについて、オランダ政府は主権国として独自に判断しており、個別の事例についてはコメントしないと話している。

ASMLでは、EUV機器輸出のライセンスの有無にかかわらず、旧世代の機器の輸出が続くことから、2020年には中国向け輸出が拡大すると予想している。

(Alexandra Alper記者, Toby Sterling記者、Stephen Nellis記者、翻訳:エァクレーレン)

[ワシントン/アムステルダム/サンフランシスコ ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200121issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月21日号(1月15日発売)は「米イラン危機:戦争は起きるのか」特集。ソレイマニ司令官殺害で極限まで高まった米・イランの緊張。武力衝突に拡大する可能性はあるのか? 次の展開を読む。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中