トランプ、半導体めぐりオランダに圧力 狙いは中国への技術流出阻止
核心部分は安全保障
ASMLの機器は、ウエハーと呼ばれるシリコン板にきわめて精細な回路をレイアウトするため、レーザーによって生成し巨大なミラーで絞り込まれる極端紫外線(EUV)のビームを利用する。これによって、民生用でも軍事用でも不可欠とされる、より高速で強力なマイクロプロセッサ、メモリその他の先進的な部品の製造が可能になる。
現在、最先端の半導体を製造する能力を持っているのは、米国のインテルや韓国のサムスン電子<005930.KS>、台湾のTSMC<2330.TW>など一握りの企業に限られる。
だが、中国はこれらの企業に半導体製造技術の分野で追いつくことを重要な国家的優先課題として掲げており、その取り組みに数百億ドルを投資している。
こうした動きは、国家安全保障上の理由から中国への高度テクノロジーの流出阻止を目指すトランプ政権の取り組みと真っ向から対立してきた。米国製品の輸出企業は現在、特別な許可がなければ、ブラックリストに掲載された中国企業、たとえば巨大電気通信メーカーの華為技術(ファーウェイ)や監視機器を扱う杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)<002415.SZ>などへの輸出を行うことができない。
また、米国政府は、たとえブラックリストに掲載されていない相手であっても、米国のテクノロジーによって作られた製品を販売したいと考える企業に対して、中国企業への輸出許可を与えない場合がありうる。とはいえ、米国外で製造を行っているASMLのような企業の場合は、テクノロジー流出の防止がはるかに難しくなる。
現在の規制のもとでは、米国は自国製部品が価格の25%以上に相当する場合、他国から中国に向けて出荷される多くのハイテク製品に関して、米国政府による許可取得を義務づけることができる。2人の関係者によると、米商務省はASMLのEUV機器について監査を実施。しかし、25%以上という基準に該当するという結論には至らなかった、と関係者の1人は明らかにした。
ロイターが昨年11月に報じたとおり、米商務省は現在、一部のケースに関して、25%という基準をさらに厳しくすることを検討している。
輸出を直接阻止する方法がなかったため、トランプ政権は同盟国であるオランダに対し、安全保障上の観点を考慮するよう求めた。リソグラフィ機器は、民生・軍事の双方で利用される、いわゆる「軍民両用」テクノロジーの輸出制限に関して協調する「ワッセナー・アレンジメント」と呼ばれる国際協定の対象となっている。
2人の関係者がロイターに語ったところでは、米国防総省当局者は、ASML製品輸出の安全保障上のリスクに関して、オランダ側のカウンターパートと協議を重ねた。会合は2018年末と2019年1月にワシントンのオランダ大使館で行われたという。