コラム

わがまま放題のトランプの願いにイエス様は「ノー」(パックン)

2021年01月09日(土)14時00分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

Trump's Self-Charity Plan / (c)2021 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<クリスマスから年末年始は慈善行為や寄付の盛んな季節。トランプの「注目や愛情を強く欲する精神状態」は十分に救済対象と言えるけど...>

弱者救済を訴えたイエス様の誕生日を祝うクリスマスシーズンは、慈善行為や寄付をする季節として知られている。風刺画では、年末年始の活動で有名な4つのチャリティー団体にかこつけて、個人的な救済を乞うトランプを描いている。

シーズン中、Salvation Army(救世軍)のボランティアは街角に立ち、鐘を鳴らしながら寄付を募る。Help the needy(貧困な人を助けよう)と、普段から呼び掛けているが、実は needy には、注目や愛情を強く欲する精神状態を指す意味もあるので、トランプにも十分適用される。

Toys for Tots(訳:子供のためにおもちゃを)は恵まれない子供に本やおもちゃを提供する団体。トランプは I want the nuclear football! と、核兵器発射に必要なブリーフケース(通称「核のフットボール」)が欲しいとダダをこねている。トランプは実は年始までこの「おもちゃ」を持っているが、正月過ぎあたりでジョー・バイデン次期大統領の手に渡される。

Feed the Children(訳:子供たちに食べ物を)は、子供のために食料を支援する組織。ここでトランプは My children, to be specific「正確に言うと、俺の子供に」と、補足している。超億万長者のトランプ一族はお食事券とか、絶対に要らないのに。汚職事件だって、有り余っているぐらいだ。

Make-A-Wish(訳:願い事をする)は重病を患う子供の願いを叶える団体。「消防士になる」とか「憧れのスポーツ選手に会う」などの願いが普通だが、トランプは I wish the Supreme Court would declare me the winner(どうか最高裁が自分を勝者と決定しますように)と、選挙結果を覆したがっている。

不思議なことに、これらの要求のうち2つは叶いそうだ。「不正選挙にあらがうため」に寄付を募ったら、なんと2億ドル以上が集まった。法廷闘争などに使う費用はごく一部とみられ、それ以外はほぼ自由に使える。「顧問料」としてトランプ本人や子供たちに配ることも可能。メリークリスマス!

しかし、残り2つの希望は叶わないようだ。大金をかけて50以上の裁判を起こしたが、とことん敗訴している。核兵器の発射装置も、大統領の座も戻ってこない。最高裁判事9人中3人がトランプに指名されたのに、彼の願いを聞いてくれない。いくらクリスマスとはいえ、そんなプレゼントはもらえない。たぶんイエスに聞いても答えはノーだろう。

【ポイント】
GIVE TO YOUR FAVORITE TRUMP CHARITY THIS HOLIDAY SEASON
この年末年始はお気に入りのトランプ・チャリティーに寄付を

<本誌2021年1月12日号掲載>

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

バーゼル委、銀行監督規則を強化 気候変動関連リスク

ワールド

韓国財政、もはや格付けの強みではない 債務増抑制を

ワールド

米最高裁、トランプ氏免責巡り一定範囲の適用に理解 

ワールド

岸田首相、5月1─6日に仏・南米を歴訪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story