コラム

在日への視線は変わっていない 今こそ『パッチギ!』が見られるべき理由

2021年07月30日(金)18時10分

さらにその翌年、埼玉にある朝鮮初中級学校を訪ねた。その日は文化祭。いろんな催しがあった。終わってから子供たちの父兄とマッコリを飲んだ。酔っぱらった。楽しかった。そしていろいろ考えた。

彼ら在日2世、3世(最近は4世、5世も多くなった)は日本で生まれ育ちながら選挙権は与えられていない。2010年に始まった高校無償化から朝鮮高校は除外され、19年に始まった幼児教育・保育の無償化も朝鮮学校付属の幼稚園などは対象外とされ、さらにコロナ禍で困窮する学生に国が最大20万円を支給する「学生支援緊急給付金」の対象から朝鮮大学は除外された。

明らかな嫌がらせ。時代は何も変わっていない。松山とキョンジャが合奏する「イムジン河」が切ない。今だから見られるべき映画だ。

magmori210730_pacchigi2.jpg『パッチギ!』(2005年)
©2004「パッチギ!」製作委員会
監督/井筒和幸
出演/塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、楊原京子

<本誌2021年8月3日号掲載>

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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