コラム

中国No.1トーク番組もやられた! 習近平「検閲」最新事情

2017年07月03日(月)16時48分

Fred Dufour-REUTERS

<人気の3サービスに下った「ネット動画を全面改正せよ」との通達。出演した番組が放送されなかったり消されたりといった実体験を交え、検閲事情をお伝えしよう>

今回は、中国ではお馴染みの「検閲」の話。習近平政権になって検閲が厳しくなったと言われるが、習政権もまもなく5年。最近の検閲事情はどうなっているのか、気になっている人も多いだろう。私の実体験を交えてお伝えしたい。

私は最近、中国での活動が増えている。以前にもこのコラムで紹介したが、中国人の多くが「日本で選挙に出馬した元中国人」に興味津々なのだ。私も民主主義の素晴らしさを伝えたいと願っているので、テレビやネットの番組出演の要請にはできるだけ応えるようにしているが、その前に立ちはだかるのが検閲である。

6月22日、中国政府のメディア統括部門である国家新聞出版広電総局が突然、新浪微博、AcFun、鳳凰網の3サービスに対して、ネット動画業務を全面改正するよう通達を下した。

3サービスは「情報ネット電波動画番組許可証」を保持していないにもかかわらず、大量のネット動画を配信していた。しかも動画には、国家規定に合わない時事政治系や社会に対してネガティブな見方をする評論が含まれていたというのが理由である。

許可証が必要というのも面倒な話ではあるが、ネガティブな社会評論が許されないというのも困った話だ。「諫言、耳に痛し」と言うではないか。私を含め、ジャーナリストが社会批評をする時には手厳しく批判するのが常。褒めたたえるばかりでは批評にならない。

しかし、政府の通達は絶対だ。鳳凰網は時事政治系番組のネット配信を中止してしまった。その1つ、中国ナンバーワンのトーク番組である「鏘鏘3人行」に私は度々ゲスト出演しているのだが、この番組も、私が出演した回を含めすべてのバックナンバーのネット公開を停止した。

せっかく頑張って話した内容が当局のお叱りひとつで存在を抹消されてしまう。中国で言論に携わる者として避けては通れない問題とはいえ、やりきれない気持ちになってしまう。

問題は過去の番組だけではない。私が出演したあるテレビ番組は、収録から1カ月以上が経つがいつまで待っても放送されない。このままお蔵入りになってしまうのだろうか。他にも2本、放送されないネット番組がある。残念だが、ギャラは振り込まれたのでまあよしとするしかないだろうか(笑)。

【参考記事】中国SNS最新事情 微信(WeChat)オフィシャルアカウントは苦労の連続!

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ラファ攻撃は「人道上の悪夢」、停戦合意に尽力を=国

ワールド

米英豪、ロックビットのロシア人幹部に制裁 ランサム

ビジネス

米金融政策、想定ほど引き締まっていない可能性=ミネ

ビジネス

米当局、テスラに詳細要求 「オートパイロット」リコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    「ハイヒールが効率的な歩行に役立つ」という最新研究

  • 8

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 9

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story