コラム

韓国とアメリカがスワップ取極を再延長、日韓スワップ取極も可能か

2020年12月24日(木)16時51分

実際、韓国で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認された日の翌日1月20日には1ドル1,159ウォンだった為替レートは、アメリカとのスワップ取極が発表された直後の3月20日には1ドル1,280ウォンまで下落した。さらに、2月までは2,000を上回っていた株価指数(KOSPI)も3月19日には1,458まで暴落していた。韓国にとっては2008年と同じくアメリカとのスワップ取極に頼らざるを得ない状況だった。

■韓国における2020年の株価指数と為替レート(対ドル)
kimchart1.png
出所)韓国取引所ホームページを用いて筆者作成

アメリカも新型コロナウイルスにより揺れている自国の国債市場を安定化させると共に、グローバル金融市場のドル調達を円滑にするために韓国を含めた9か国とスワップ取極を締結することが望ましかった。3月19日にアメリカとスワップ取極を締結してから金融市場に対する不安が解消された後、株価は少しずつ上昇し、ウォン安も止まるなど金融市場は安定化され始めた。

中国やスイスやカナダとも締結

韓国は、アメリカ以外の国とのスワップ取極にも積極的な姿勢を見せている。アメリカとのスワップ取極を再延長する前の2020年10月22日には中国とのスワップ取極の契約を2025年10月まで5年延長した。韓国は2020年12月24日現在、アメリカ(600億ドル)、中国(590億ドル)、スイス(106億ドル)、カナダ(事前限度なし)など、合わせて8か国と総額1962億ドル相当のスワップ取極を結んでいる。

■韓国が締結しているスワップ取極と金額(2020年12月24日現在)
kimchart22.png
出所)韓国銀行「ECOS経済統計システム」を用いて筆者作成

韓国における外貨準備高はアジア経済危機があった1997年末の89億ドルから外貨準備高は2020年10月末時点には4,265億ドルまで増加した。日本の1兆3,223億ドル(2019年6月末現在)には及ばないものの、スワップ取極で確保したドルを合わせると外貨準備高の合計額は6,000億ドルを超えている。

■韓国における外貨準備高の推移
kinchart3.png
出所)韓国銀行「ECOS経済統計システム」を用いて筆者作成

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story