コラム

GDPでドイツに抜かれても、そんな数字で騒いでいる場合じゃない

2023年11月03日(金)17時30分

日本とドイツは、お互いの実像を知らずにいる。戦前の日本はドイツを過大評価して日独伊三国同盟を結んで大失敗しているし、ドイツは日本のことを当時も今も、過去の集団・権威主義をひきずる遅れた社会と思っている。日本人はドイツがIT、AIで出遅れていると思っているが、日本の出遅れも相当なもの。ドイツにはシーメンス、ボッシュなどの大企業、そして日本では知名度が低いSAPのようなソフトウエア大企業もある。

ドイツは欧州の盟主とまではいかないが、英仏と並んで柱となる国だ。それでも、ウクライナ戦争でロシアの脅威が現実化した今は、対米自主外交のバクチにはおいそれと乗り出せない。そこは、中国の脅威が増大する日本の状況と酷似する。

もしトランプ前米大統領が再選されれば、世界は東西双方の同盟関係が実質トップ不在の「大空位時代」を迎える。日本はドイツとGDPの数字を競うより、韓国、オーストラリア、EU、ASEANの一部諸国などと、中堅国家による民主主義・自由貿易連合をつくってはどうだろう?

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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