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トヨタの今期、2割の営業減益予想 成長領域などへの投資膨らむ

2024年05月08日(水)18時24分

 5月8日、トヨタ自動車は、2025年3月期の連結業績予想(国際会計基準)について、営業利益が前年比19.7%減の4兆3000億円になる見通しと発表した。2019年の東京モーターショーで撮影(2024年 ロイター/Soe Zeya Tun)

Maki Shiraki Nobuhiro Kubo

[東京 8日 ロイター] - トヨタ自動車が8日に発表した2025年3月期の連結業績予想(国際会計基準)は営業利益、純利益とも減益見通しで、いずれも市場予想を下回った。営業収益は過去最高を計画するが、取引先も含めた賃上げや職場環境の改善など人材面の投資、人工知能(AI)など成長領域への投資が膨らむ。24年3月期の営業利益は日本企業として初の5兆円台に乗せた。

今期の営業収益は前年比2%増の46兆円、営業利益は同19.7%減の4兆3000億円、純利益は同27.8%減の3兆5700億円を見込む。IBESがまとめたアナリスト20人の営業利益予想は5兆2780億円、18人の純利益予想は4兆6760億円だった。

設備投資は同6.9%増の2兆1500億円、研究開発費は同8.1%増の1兆3000億円でいずれも過去最高を計画する。このうちソフトウエアや自動運転など向けのAI、水素や電気自動車(EV)関連技術などに1.7兆円を振り向ける。これとは別に、仕入先や販売店の労務費負担、デジタル化などを通じた職場環境の改善などの人的投資にトヨタ分を含めて計3800億円を投じる。

トヨタはハイブリッド車(HV)を中心に販売が好調だが、ダイハツ工業などグループ企業で認証不正が相次ぎ、会見した佐藤恒治社長は今期について「グループ各社の不正や余力不足の問題に正面から向き合う足場固めが最優先事項」と述べ、「意思をもって足場固めに必要なお金と時間を使う」と説明した。「強固なサプライチェーン(供給網)の基盤を守っていくことに向き合う」とも語った。

グループの世界小売販売は前年比1.3%減の1095万台、トヨタ単体の世界生産は同0.3%増の1000万台を計画する。通期の前提為替レートは1ドル=145円、1ユーロ=160円。トヨタは1円円安に振れると対ドルで500億円、対ユーロで100億円の増益効果がある。

トヨタは発行済み株式の3.04%に当たる4億1000万株、総額1兆円を上限とする自社株買いを決議した。取得期間は5月9日から2025年4月30日。3.19%(消却前)に当たる5億2000万株を9日に消却することも発表した。3月末時点の時価で2兆円に相当する。

EVの成長が鈍化する中、佐藤社長は、足元でEVの「インフラや付加価値が提供できていない」とし、26年以降の販売環境が想定と変わる可能性を指摘。トヨタのEV販売計画(26年に150万台、30年に350万台)は「あくまで基準」として環境が変われば基準も変わり実需に柔軟に対応するとし、各市場のエネルギー事情などに合わせ多様な車の選択肢を提供する「マルチパスウェイ」の考え方も堅持する意向を示した。

一方、政策保有株に関して、山本正裕経理本部長は「歴史的な財務支援や合併などで積み上がってきた持ち合い株も聖域なくしっかり考え、生きたアセットに変えていきたい」と話した。

前期の連結業績は、営業収益が前の年に比べ21.4%増の45兆0953億円、営業利益が同96.4%増の5兆3529億円、純利益が同101.7%増の4兆9449億円だった。米国など主力市場でHV販売が伸びたほか、円安も追い風となり、営業利益は日本企業初の5兆円台に乗せ、過去最高を更新した。

ロイター
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