コラム

日ロ首脳会談は「顔つなぎ」、北方領土問題の解決は難しい

2017年09月06日(水)11時10分

プーチンは来年3月に再選を果たしても、連続3選が憲法で禁じられているためにすぐにレームダックになる可能性が指摘されている。さらに男性の平均寿命が短いロシアで、64歳のプーチンは「後期高齢者」。側近やエリートらは「プーチンの次」を視野にうごめき始めるだろう。

日ロ首脳は双方とも長期政権ということを前提に、共同経済活動を足掛かりにじわじわと領土問題を解決に向けて進めていこうということだった。そのプロセス半ばにしていずれかの首脳がいなくなるということになりかねない。共同経済活動という取っ掛かりが消えると、ロシアは「領土問題は解決済み」というソ連以来の強硬姿勢に戻ることになるだろう。

【参考記事】ロシアが狙う地中海という足場

だから両首脳には、「日ロ関係増進は両国の戦略的利益にかなう。そのためにも北方領土問題を解決する必要がある」という認識を、具体的な文書や声明、仕組みとして残してほしい。トランプ米大統領が世界をかき回すなか、日ロ関係が有する戦略的な意味合いは、双方にとって増大している。もし将来、朝鮮半島が統一されて米軍が撤退し、核保有の経済大国が出現することともなれば、日ロ関係の持つ意味合いはますます増える。

経済面でも、ロシアの不得手とするネット時代の「第4次産業革命」や脱石油経済での協力を打ち上げれば、ロシアは官民を挙げて日本に注目することになるだろう。

本誌9月5日発売最新号掲載

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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