コラム

「ブラック労働」必至の英首相になぜなりたがる?

2019年06月25日(火)15時00分

アメリカの歴代大統領の何人かには、サイコパスの特徴がみられるとの記事を読んだことがある。例を挙げれば、彼らは普通の人が感じるようなストレスにも動じず、自らの地位が脅かされない限りは嫌われることもいとわず、もっともらしく嘘をつき(なぜなら良心が痛まないから)、断固とした姿勢でリスクを取る(なぜならその状況を楽しんでいるし、結果を心配し過ぎたりしないから)。

要は、サイコパス的要素は一般的には悪いものだが、良い方向に生かすこともできる、ということだ。フランクリン・ルーズベルトもジョン・F・ケネディもロナルド・レーガンも皆、サイコパス「検定」のスコアは高いけれど、偉大な大統領として記憶されている。

となると問題は、権力を追い求めるという点で政治家が普通の人々とは違う、ということではなく、その権力が良い方向に向けられるかどうか、という点だ。権力に狂った独裁者は当然ながら悪いものだが、きちんと働く抑制と均衡のシステム下にいる権力欲旺盛な政治家は、望ましいものになり得る。

保守党党首選を見てみると、同僚議員や党員やメディアや国民が注視するなかで、意欲ある人々が競い合っている様子が分かる。次期首相になる人を僕たちみんなが気に入ることはないかもしれないけれど、彼は容赦なく品定めされる。せいぜい彼には次の総選挙が行われるまでの間、首相にふさわしい人物であると自ら証明するための時間が与えられるわけだ。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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