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インタビュー:今後も金融正常化と政治がリスク、相場波乱に備え=英インサイトCIO

2018年10月17日(水)16時41分

 10月17日、英資産運用大手インサイト・インベストメントの運用責任者は、主要中銀の金融政策が以前ほど緩和的ではないことや政治的不透明感、市場流動性の低下を背景に、突発的で大規模な相場波乱が時々起きるのが自然であるとの見解を示した。写真は2016年1月撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)

[東京 17日 ロイター] - 英資産運用大手インサイト・インベストメントの運用責任者は、主要中銀の金融政策が以前ほど緩和的ではないことや政治的不透明感、市場流動性の低下を背景に、突発的で大規模な相場波乱が時々起きるのが自然であるとの見解を示した。そうした波乱に備え、今年はポートフォリオのリスクを落とし続けていると明らかにした。

11日に行ったロイターとのインタビューで述べた。

インサイト・インベストメントは、米BNYメロン傘下の運用会社(本拠地はロンドン)で、6月末時点の運用資産残高は6010億ポンド(約88兆円)。

エイドリアン・グレイ最高投資責任者(CIO)の来日インタビューの概要は以下の通り。

──市場は足元、米国発で世界同時株安の様相を呈している。

「世界の投資環境は大きくシフトしつつある。米国は既に利上げを開始してQE(量的緩和)からQT(量的引き締め)へと移行、ECB、英中銀、日銀も(資産)買い入れの停止や縮小に向かっている。世界の金融政策はもはや超緩和的ではない。世界の投資環境にとってこれまで大きな追い風になってきたことが、向かい風となりつつある」

「もう一つの向かい風は政治だ。反グローバリゼーションとポピュリズムは、世界の1カ所だけで台頭しているわけではない。米国のトランプ大統領、英国のブレグジット(EU離脱)、イタリアの(ポピュリズム政党)五つ星運動と(極右政党)同盟などが世界を席巻している」

「現在の相場波乱は、リスクアセットが、足元のケースでは株式が、こうした金融政策と政治面での環境変化を織り込もうとする動きだと考えている」

「市場の流動性が世界金融危機前と比べて異なる状況にあることも大いに影響している。流動性の枯渇により、例え比較的少ない売りであったとしても大きな値動きを引き起こすようになった。前述したパラダイムシフトが起きる中で、それに昨今の市場流動性の乏しさが相まって、個別のイベントが時として大きく増幅されてしまう環境にある」

──ボラティリティーが高まるということか。

「穏やかでボラティリティーの低い環境から、さほど穏やかでなくボラティリティーの高い環境への変化が起きている。そうした状況下では、パッシブ運用によるベータ戦略(市場全体の動きと連動したリターンを求める)よりも、アルファ戦略、(市場全体の動きを上回るリターンを狙う)の方が魅力的となる可能性がある」

「金融市場は、常にどこに脆弱(ぜいじゃく)性が存在するのかを探索して回っている。2月には低ボラティリティーに賭けるポジションが過剰になっているのを見つけ、VIX(シカゴ・オプション取引所のボラティリティー・インデックス)が急上昇した。その後、多くの人が十分リスクを認識せず新興国市場に投資していたのを見つけて、そこも崩れた」

「そして今、主要株式市場でボラティリティーの高まりがみられるというわけだ。現在、驚くほど大きいパニック的な値動きが時折見られるのは、全くもってノーマルな状況と言えるだろう。パーティーは永遠には続かない。宴が終わる前に帰宅するのが賢明だ」

──そうした分析に基づき、インサイトは実際にパーティーから退出したのか。

「もちろんだ。われわれは未来を占う水晶玉を持っているわけではないが、今年の大半においてポートフォリオのリスクを落とし続けている」

──2月のボラティリティーショック以降か。

「そうだ。債券投資家の場合、リスクとは、クレジット・スペクトラムを下方にたどってよりリスクの高い証券に投資することだ(クレジット・スペクトラムを上方にたどってリスクを落とし、ポートフォリオの質を高めた)」

「株式については、ベータの影響を極力ゼロにするロングショート戦略をとっているが、運用チームからは、過去3年と比べて同戦略の投資妙味が高まっていると聞いている。決算発表に限らず、個別銘柄に関する何らかの材料が出た場合、その値動きが大きくなる傾向がある」

*見出しを修正しました。

(インタビュアー:植竹知子 編集:田中志保)

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