コラム

世界で唯一国民のモラルだけで「戦争」を戦ってきた日本、ついに特措法改正、私権の制限、罰則規定に踏み込む政府

2020年12月29日(火)16時14分

スイスのスキー場でコロナ隔離中の英国人200人が夜中に逃亡した。

スイスのスキー場でコロナ隔離中の英国人200人、夜中に逃亡

日本人はあまり認識していないが、第2波が訪れ変異種が感染拡大している海外では、罰金、国外退去、強制隔離が日常だ。世界中で隔離や行動制限で感染拡大を押さえたい当局と自由な生活を守りたい個人が闘っている。

大人数での忘年会、深夜の2次会、冬休みの帰省旅行以外は普通の日常が送れている日本

対して日本の戦略は、「私権の制限をできる限り行わず、緊急事態宣言にも罰則規定も設けず、大人の国民に自粛行動を期待しつつも経済活動は維持し経済の打撃を回避する。国民の自粛行動によって感染拡大による医療崩壊を避けながら時間を稼ぎワクチンの開発を待つ」というもの。

•経済活動自粛も飲食店等への時短「要請」のみ

•移動旅行飲食の国民の日常の接触制限にも自粛「要請」のみ

•コロナ対応病院として患者を受け入れるかどうかも病院へ「要請」のみ

先程の中国の人、ロックダウンのヨーロッパ、シンガポールの市民からみると桃源郷のような世界だ。

この冬の感染拡大を見越して秋の国会で補償と罰則規定の伴う特措法の改正ができていれば

本来、空気が乾燥して寒くなる秋冬は、春夏とは違って風邪が流行しやすい。そして北海道では関東より1ヶ月前に冬が来る、そして北海道で先に来た冬の感染現象は1ヶ月後には寒さとともに関東にも来る。当然のことだ。

そうしたなか菅政権は感染も10月には一旦収まったとして、如何に感染予防しながら観客を入れたオリンピックが開催できるかと、横浜球場で収容人数を増やす実験などを行っていた。またGoTo対象に東京を加える等経済優先を新政権として押し出した。

春の緊急事態宣言解除後相当の時間があったにもかかわらず、秋の国会では、オリンピックの1年延期に関わる改正法や、学術会議問題に明け暮れ、肝心の新型コロナ対応に向けた特措法の改正は先送りされた。

コロナ対応は、法的には未だに感染症法上「政令で2類相当の感染症として時限的に準用された措置」を行い「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の改正で緊急事態宣言を出したり、罰則規定無く外出自粛「要請」や休業「要請」ができるようになっているだけだ。

新型インフルエンザ等対策特別措置法について 内閣官房

秋冬に向けて、国会会期中に特措法の改正をしていれば、年末年始の今、法的強制力のある具体的な施策が打てるはずだったが、結局春から関連法案の整備は未だに進んでいない。

プロフィール

安川新一郎

投資家、Great Journey LLC代表、Well-Being for PlanetEarth財団理事。日米マッキンゼー、ソフトバンク社長室長/執行役員、東京都顧問、大阪府市特別参与、内閣官房CIO補佐官 @yasukaw
noteで<安川新一郎 (コンテクスター「構造と文脈で世界はシンプルに理解できる」)>を連載中

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 8

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 9

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story