コラム

今年の春節は史上最悪、でも新型肺炎で「転じて福」となるかもしれない

2020年02月12日(水)18時25分
周 来友(しゅう・らいゆう)

AFLO

<新型コロナウイルスのせいで、中国人が1年間楽しみにしてきた春節が台無しになってしまった。だが中国では今、日本の株がぐんと上がっている。今回の騒動が日中関係によい影響をもたらすかもしれない>

今年の春節(旧正月)は史上最悪だった。

中国人は通常、この時期に1~2週間の長期休暇を取る。春節のために1年間身を粉にして働いていると言っていい。旧暦がない日本にいても、中国人は春節を心待ちにし、休暇が取れれば里帰りをしたり旅行に行ったりする。

かく言う私も1月24日の大みそかには、水餃子(ギョーザ)や春巻き、ちまきを用意して家族と食卓を囲んだ(仕事人間のさがで、ゆっくり味わう間もなく会社に戻ってしまったが)。

そうした楽しみが新型コロナウイルスのせいで吹き飛んでしまったのだ。故郷に帰れなくなった人、たまたま日本にいて戻るに戻れなくなった人......。見ていて本当に気の毒になった。

そんななか、2月2日に『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系列)に出演した。テーマは「春節で迷惑観光客が激増⁉ 偽造身分証に...カニ密漁まで⁉ 中国! 北朝鮮! 隣の外国人トラブルSP」。

以前にもここで紹介したが、中国人観光客のマナーは「人気のネタ」らしい。私は中国人の典型的な行動規範を説明し、出演者から中国人を代表してお叱りを受ける(大丈夫、慣れています)。

迷惑な中国人は来なくていい! その上、ウイルスを持ち込むかもしれない中国人なんて日本に入れるな! そんな声がネット上にも散見される。ありがたく拝聴するけれど、中国人観光客はこれからしばらく本当に姿を消すかもしれない。

中国政府は1月27日以降、国外団体旅行を禁止した。個人旅行やビジネス目的の訪日は許されるが、3月末までに40万人以上が訪日を中止するともいわれている。日本経済には大打撃だ。

17年前のSARS(重症急性呼吸器症候群)では同情的なトーンの報道が多かったと記憶しているが、対岸の火事という感覚がそうさせていたのかもしれない。今回はそんなトーンの報道がないが、それは日本にとってより深刻で身近な問題となっているからだろう。

では、この騒動が終息したときに日本は「やっぱり中国人が来ないと困る」と思うのか、それとも「来なくてもいいことが分かった」となるのか。どちらかにくみするわけではないが、どういう世論になるかは気になっている。

一方で中国人の側も、日本に行けなくなるこの「冷却期間」中に、いつまでたっても「マナーが悪い」と批判される状況に目を向けてもらいたい。

【参考記事】新型コロナウイルス:「ゴーストタウン」北京からの現地報告

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

OPEC、世界需要予想据え置き 「OPECプラス産

ワールド

米のロシア産ウラン輸入禁止措置、8月11日から開始

ビジネス

FRB利下げ後ずれ、ECBに影響する可能性=ベルギ

ワールド

ロシア、最小限の兵力損失で勝利達成へ=ベロウソフ次
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story