最新記事
ウクライナ戦争

中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

Leading Russia Watcher in China Makes Surprise Ukraine War Prediction

2024年4月18日(木)15時57分
マイカ・マッカートニー

戦況についての真実を何も知らされていないプーチンはいずれ馬脚を露わすだろう(ロシア大統領選投票日の3月17日、パリで行われた反プーチン・デモ) Photographie par Eric Broncard/Hans Lucas.

<「裸の王様」プーチンにソ連崩壊後の産業空洞化もアダに。頼みの中国も常にロシアとの関係を見直している>

ウクライナ戦争はロシアの敗北に終わる──中国のロシア専門家がそう予測し、大きな反響を呼んでいる。

北京大学の馮宇軍教授は、英誌エコノミストに寄せた論説で、ロシアの敗北を予測する一方、中ロ関係の今後についても冷ややかな見解を述べている。国際情勢に関する中ロの利害は乖離じつつある、というのだ。

【画像】ロシア黒海艦隊は大半が撤退? 衛星写真で判明した「もぬけの殻」と化したクリミアの海軍基地

中国政府は建前上、中立の立場を取りつつ、西側の対ロ制裁に反対し、国内のソーシャルメディアでロシア批判を禁止するなど、ロシアのウクライナ侵攻開始時から密かにロシアの肩を持ってきた。

 

馮の分析は中国政府がこれまで打ち出してきた公式見解とは異なるものだけに注目される。

馮は、「ロシアの最終的な敗北を不可避にする」主要な要因を4つ挙げている。

1つ目は「ウクライナの抵抗と国民の結束レベルが今に至るまで並外れたものである」こと。

2つ目は、ウクライナが「今なお広範な」国際的支援を得ていること(ただし馮も認めるように、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、西側の支援は不十分だと訴えている)。

真実を知らされないプーチン

3つ目の要因は「現代の戦闘の性質」だ。馮によれば、そこで問題になるのは、「産業力と、指揮、統制、通信及び情報システム」を合わせた力だ。

その意味でロシアの戦争マシンは不利だと、馮はみる。ロシアはソ連崩壊に伴う「劇的な産業の空洞化」から完全に立ち直っていないからだ。

4つ目のロシアの決定的な欠陥は、クレムリンの最高レベルの政策決定者たちが十分な情報を得ていないこと。馮によれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と安全保障担当顧問らは「情報のコクーン(繭)」に囚われている。正確な情報が上がってこないため、失策に気づかず的確な軌道修正ができない。

その点ではウクライナ政府のほうが「より臨機応変に効果的」な対応ができると、馮は述べている。

本誌は中国とロシアの外務省に見解を求めたが、今のところ回答は得られていない。

馮はまた、ロシアにとって思いもよらぬダメージとなった動きとして、ウクライナ侵攻をきっかけにヨーロッパにおける対ロ包囲網が一段と強まったことに言及している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シンガポール航空機、乱気流で緊急着陸 乗客1人死亡

ビジネス

アストラゼネカ、30年までに売上高800億ドル 2

ビジネス

正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=

ビジネス

IMF、英国の総選挙前減税に警鐘 成長予想は引き上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル写真」が拡散、高校生ばなれした「美しさ」だと話題に

  • 4

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 5

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 6

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中