最新記事
ヨルダン王室

ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への揺るぎない献身を示す?

Did Princess Salma of Jordan Shoot Down 5 Iranian Drones?

2024年4月17日(水)15時19分
ジャック・ロイストン(王室担当記者)

母のラーニア王妃(右)とサレマ王女(2015年8月26日) REUTERS/Regis Duvignau

<中東の親米国家ヨルダンは、イランの大規模攻撃からイスラエルを防衛するのに協力したと報道されたが、ヨルダン空軍のパイロットになったサルマ王女までが参戦して大活躍したという噂は本当なのか?>

先週末、イランがイスラエルに初の直接攻撃を行った後、ヨルダン空軍のパイロットでもある同国のサルマ王女が、イスラエルを守るためにイランのドローンを撃ち落とした、という噂がネット上で広まった。

イランは、シリアのイラン領事館が攻撃されたことに対する報復として、イスラエルに330のドローンとミサイルを発射した。イスラエル軍によれば、その99%は撃墜された。

イスラエルだけでなく、ドローンやミサイルが空域を通過したヨルダンやアメリカなども協力して撃墜した。

多数のX(旧ツイッター)アカウントが、サルマ王女もそこでパイロットとして参加し、5または6機のドローンを撃墜したと主張している。

【画像・動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

Xアカウント「モサド・コメンタリー」の投稿は、すでに削除されているが、少なくとも160万回閲覧され、4万5000の「いいね」を獲得した。この投稿には、「ヨルダンのサルマ王女が昨夜、イランのドローン5機を撃墜したと伝えられている」と書かれていた。

モサド・コメンタリーはその後、「ヨルダン軍司令官からの要請を尊重し、以前のツイートを削除した」と投稿している。

王女が本当に救ったのは


また、ウェブサイト「エミレーツ・ウーマン」の見出しと思われるスクリーンショットも、オンラインに出回った。そこには、「ヨルダンのサルマ王女が、イランのドローンを一晩で6機撃墜したと伝えられている」という説明が添えられている。

スクリーンショットにはエミレーツ・ウーマンの記事の冒頭部分も含まれており、「紛争のさなか、ヨルダンのサルマ・ビント・アブドッラー王女が再び、人類への揺るぎない献身を示した」と書かれている。

サルマ王女がヨルダン空軍の中尉であることは事実だ。しかし、エミレーツ・ウーマンの記事のスクリーンショットは偽情報のようだ。

ヨルダンの公式情報筋は本誌の取材に対し、「完全に間違っている。この件に関する報道やソーシャルメディアの投稿は、すべてつくり話だ。ヨルダンは、組織的な偽情報キャンペーンの標的にされている。これは明らかに、そのキャンペーンの一環だ。根拠のない主張だと断言できる」と述べている。

写真、記事の冒頭、記者の署名はすべて、エミレーツ・ウーマンの古い記事と一致している。これは、サルマ王女が2023年12月に行ったパレスチナ地区ガザ上空からの支援物資投下について詳述した記事であり、「ヨルダンのサルマ王女、空軍によるガザへの医薬品投下の指揮を執る」という見出しが付いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、米の二次制裁批判 「ドルの信認損なう」

ワールド

ハリコフ攻撃、緩衝地帯の設定が目的 制圧計画せずと

ワールド

中国デジタル人民元、香港の商店でも使用可能に

ワールド

香港GDP、第1四半期は2.7%増 観光やイベント
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中