最新記事
ドローン戦争

ウクライナ軍はロシア国境から1000キロ以上離れた標的に届くドローンを手に入れた

Shahed Drone Plant Deep Inside Russia Hit by UAV: Video

2024年4月3日(水)19時58分
イザベル・バンブルーゲン

ウクライナのドローン攻撃に遭ったロシア西部タタールスタン共和国エラブガ(4月2日) Ostorozhno Novosti/Handout via REUTERS

<ロシアがウクライナ国境から遠く離れたタタールスタンに作ったドローン工場も、ウクライナからの攻撃から逃れられない>

ウクライナ国境から1000キロ以上離れたロシアのタタールスタン共和国にある工業地帯がドローン攻撃され、自爆型ドローン「シャヘド」の製造工場が攻撃されたと報道されている。

タタールスタン共和国ルスタム・ミンニハノフ首長の報道官は4月2日、テレグラムで、「タタールスタン共和国エラブガとニジネカムスクの工場を標的にしたドローン攻撃があった」と述べた。

「深刻な被害はなく、工場での作業にも影響はなかった」。ただし、「残念ながら、エラブガでは負傷者が出た」。

複数のロシア語テレグラム・チャンネルで共有されたこの動画には、ドローンがエラブガの工場に突入し、大きな爆発を起こす瞬間とみられる映像が映っている。

【動画】「無敵」のHIMARSが初めてロシア軍のミサイルの餌食になった瞬間

ロシア国営タス通信によれば、十代の2人を含む6人が負傷したようだ。

ドイツのシンクタンク、ヨーロッパ・レジリエンス・イニシアティブ・センターの創設者セルゲイ・スムレニーはX(旧ツイッター)で、「ロシアの支配下にあるタタールスタンのエラブガで今日、奇妙な爆発が起きた」と述べた。「エラブガは、ウクライナから1200キロ離れており、ドローンの製造も行っているとされる『ハイテクゾーン』が存在する」

進化したウクライナドローン

ウクライナ内務省の顧問だったアントン・ゲラシチェンコはこの動画をXで共有し、攻撃が起きた地域には「イラン生まれのドローン、シャヘドの組立工場」があると述べた。

ウクライナは、この攻撃への関与を認めていない。ただし、デジタルトランスフォーメーション担当相のミハイロ・フェードロフは4月1日、ドイツ紙ディ・ヴェルトのインタビューで、ウクライナ軍は1000キロ以上離れた標的を攻撃できるドローンを所有していると述べた。

「ロシアの石油精製所を攻撃したドローンのほとんどは射程700〜1000キロだが、今は1000キロ以上のモデルがある」

ロシアの独立系報道機関モスクワ・タイムズによれば、ロシアは2023年、タタールスタン共和国の工場でシャヘドの生産を開始したという。2023年秋には月間約200機が生産された、とモスクワ・タイムズは伝えている。

ウクライナが2023年12月に発表したように、ロシアが過去22カ月でウクライナ戦争に投入したシャヘドは3700機以上と、ロシアはこのドローンを多用している。

ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアはシャヘドを使った攻撃でウクライナを「疲弊」させようと目論んでいると述べている。ロシアによるシャヘドの使用は、2022年9月13日に初めて報告された。それ以来ロシアは、ウクライナの首都キーウや全国の重要インフラを攻撃するため、シャヘドを利用している。
(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英軍個人情報に不正アクセス、スナク氏「悪意ある人物

ワールド

プーチン大統領、通算5期目始動 西側との核協議に前

ワールド

ロシア裁判所、JPモルガンとコメルツ銀の資産差し押

ビジネス

UBS、クレディS買収以来初の四半期黒字 自社株買
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    「ハイヒールが効率的な歩行に役立つ」という最新研究

  • 8

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 9

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中