最新記事
中東

「インド製ドローン」がラファを急襲!?イスラエルに急接近するモディ中東外交

2024年2月26日(月)16時40分
モハメド・ジーシャン
インドがイスラエル軍に「ドローン」を提供、インドの中東外交の強気と不安

見本市に出展されたインド製ドローンの模型(昨年9月) ANUSHREE FADNAVISーREUTERS

<ハマス最後の拠点「ラファ」への攻撃に、イスラエル軍がインド製のドローンを投入か。インド政府はイスラエルとの連帯を表明しつつ、パレスチナ国家の建設を支持する>

2月上旬、イスラエル軍がガザ地区南部の都市ラファへの攻撃を開始しようとしていた頃、インドのメディアであるニュースが報じられた。

イスラエル軍がインド製のドローン(無人機)を監視と空爆のため投入するとのことだった。

近年、インドのモディ首相はイスラエルへの接近を強めてきた。

昨年10月7日にパレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃した直後には、米政府などに先立って、世界の指導者の中でいち早く、「イスラエルとの連帯」を表明している。

しかしその一方で、インド政府は、イスラエルのパレスチナに対する軍事行動に関しては中立の立場を貫いていて、パレスチナ国家の建設を支持する姿勢を変えていない。

12月には、ガザでの即時停戦を求める国連総会決議にも賛成票を投じている。

インド政府がこのような姿勢を取る主たる理由は、ペルシャ湾岸諸国との関係にある。

湾岸産油国はインドの原油輸入のかなりの割合を占めていて、これらの国々で働くインド人も多いのだ。

実際、2月半ばに、モディはアラブ首長国連邦(UAE)とカタールを訪問している。

ドローンをめぐる報道が事実だとすれば、インド政府はイスラエルとの関係強化に関して、より大きなリスクを伴う行動に乗り出そうと決めたと見なせる。

もしかすると、インド政府は最近のいくつかの出来事をきっかけに、自国の経済的な影響力への自信を深めているのかもしれない。

2022年8月に8人の元インド海軍の軍人がカタールで逮捕されて、その後死刑を言い渡された。

しかし、インド政府がここ数カ月、圧力をかけて交渉を重ねた結果、この2月に入って8人は解放された。

両国政府は逮捕と釈放の理由を明らかにしていないが、報道によると、8人は秘密文書をイスラエル側に提供した容疑をかけられていたという。

注目すべきなのは、元軍人たちが解放される直前に、インドとカタールがエネルギー関連の大規模な合意を結んだことだ。

向こう20年間にわたり、インドが毎年750万トンの液化天然ガス(LNG)をカタールから購入するという内容だ。

そしてその後ほどなく、モディがカタールを訪ねて「2国間の協力関係をさらに拡大・深化させる」ことを約束したのである。

インド政府はこの一件や同様の出来事を通じて、イスラエルへの接近に関してこれまで以上に思い切った行動を取っても問題ないと考えるようになったのかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

MSCI新興国指数でインド株ウエートが最高更新、資

ビジネス

海外勢の米国債保有、3月は過去最高更新 日本の保有

ビジネス

TikTok米事業買収を検討、ドジャース元オーナー

ワールド

ガザ休戦交渉、イスラエルの条件修正が暗礁原因=ハマ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中