最新記事

イスラエル

イスラエル警察のモスク襲撃に始まった暴力がシリアに拡大、ネタニヤフの狙いは

Israel Launches Strikes on Syrian Targets as Tensions in Region Mount

2023年4月10日(月)20時28分
カレダ・ラーマン

「反イスラエル統一戦線」ができる?──アルアクサ・モスク襲撃に抗議するヨルダンのイスラム教徒(4月7日、アンマン)

<イスラエルの民主主義を大幅に後退させようとしたネタニヤフ首相の司法「改革」に対する国民の反発を、外に向けようとした?>

イスラエルは4月9日、シリアに攻撃を行ったことを発表した。シリア領からイスラエルに向けてロケット弾6発が撃ち込まれたことに対する報復だと説明している。

イスラエル国防軍(IDF)は当初、シリア領内のロケット弾が発射された地点に対して、砲撃とドローンによる攻撃を行ったことを発表。その後、戦闘機によって、シリア軍第4師団の軍事施設やレーダー、砲撃基地といった拠点を攻撃したと声明を出した。

「シリアはその領土で起こるすべてのことに責任を負っているとみなされる。イスラエルの主権を侵害するいかなる試みも許されない」と、IDFはウェブサイトで発表した。

今回の攻撃は4月5日、イスラエル警察がエルサレムにあるイスラム教の礼拝所アルアクサ・モスクに突入した事件に端を発している。警官隊はイスラム教の聖なる月であるラマダン(3月22日から4月21日)の礼拝を行っていたイスラム教徒を解散させるために催涙ガスやスタングレネードを発射した。

今年は、1週間にわたるユダヤ教の祭日「過越の祭」(4月5日から13日)がラマダンと重なっている。

拡大する報復合戦

イスラエルは、警察によるモスク襲撃の目的は、モスク内に立てこもった過激派とみなされる集団を解散させることだったと発表した。だが、だがモスク内部で警官が礼拝者を殴打する様子を映した動画など、この襲撃の暴力性が明らかになり、エルサレムには不穏な空気がたちこめ、国外でも怒りが広がっている。

この事件に反発したレバノンの過激派とパレスチナ自治区ガザ地区のパレスチナ人過激派は6日、イスラエルに向けて大量のロケット弾を発射した。報復として、イスラエル軍は7日、ガザやレバノン南部のパレスチナ過激派組織ハマスに関連する場所を攻撃した。

9日のロイター通信によると、シリア国防省は、イスラエルの攻撃に対して、対空防衛システムで迎撃したと発表。同省はまた、攻撃で死傷者は出ておらず、物的損害が生じたのみであると付け加えた。

シリアの国営メディアも、シリアの首都ダマスカス付近で爆発が発生したことを伝えた。

AP通信によると、イスラエル軍は空爆を開始したのは8日で、ロケット弾1発がゴラン高原のイスラエル支配地域に着弾したと発表した。一方、ヨルダン軍は、破壊された別のミサイルの破片がシリア国境付近のヨルダン領に落下したと報告した。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英軍個人情報に不正アクセス、スナク氏「悪意ある人物

ワールド

プーチン大統領、通算5期目始動 西側との核協議に前

ワールド

ロシア裁判所、JPモルガンとコメルツ銀の資産差し押

ビジネス

UBS、クレディS買収以来初の四半期黒字 自社株買
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    「ハイヒールが効率的な歩行に役立つ」という最新研究

  • 8

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 9

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中