最新記事

ウイルス感染

ウイルス感染がパーキンソン病やアルツハイマー病などの発症リスクを高めるおそれがあることがわかった

2023年4月10日(月)18時00分
松岡由希子

ウイルス性脳炎の既往症がある人はアルツハイマーを発症する確率が30倍高かった......Kateryna Kon-shutterstock

<肺炎を引き起こすインフルエンザウイルスとアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、認知症、パーキンソン病、脳血管性認知症にも有意な関連性があった......>

ウイルス感染がパーキンソン病やアルツハイマー病のような神経変性疾患の発症リスクを高めるおそれがあることがわかった。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)の研究チームは、英国の「UKバイオバンク」とフィンランドの「フィンジェン」という欧州2カ国の大規模バイオバンクの計45万255人の診療記録をもとに、ウイルスへの曝露とアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、認知症、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、脳血管性認知症の発症リスクとの関連性を調査した。その研究結果は2023年1月19日付の学術雑誌「ニューロン」で発表されている。

ウイルス性脳炎とアルツハイマー病の関連性

研究チームはまず、「フィンジェン」の診療記録でこれら6つの神経変性疾患のうちのいずれかに罹患した3万5035人といずれにも罹患していない30万9154人を比較した。その結果、神経変性疾患と過去のウイルス感染との間に45組の有意な関連性が見つかった。

さらに、「UKバイオバンク」の診療記録でもいずれかの神経変性疾患に罹患した9676人といずれにも罹患していない9万6390人を比較した結果、有意な関連性は22組に絞り込まれた。

なかでも最も関連性が高かったのはウイルス性脳炎とアルツハイマー病だ。ウイルス性脳炎の既往症がある人はアルツハイマーを発症する確率が30.72倍高かった。「フィンジェン」のデータでは、ウイルス性脳症の症例406件のうち約5.9%に当たる24件でアルツハイマー病を発症している。

ウイルスへの曝露から最長15年にわたって関連が

肺炎を引き起こすインフルエンザウイルスとアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、認知症、パーキンソン病、脳血管性認知症にも有意な関連性があった。また、腸管感染症はアルツハイマー病や認知症と有意な関連性があり、水痘・帯状疱疹ウイルスは多発性硬化症や脳血管性認知症と有意な関連性が認められた。

これら22組の関連性のうちの6組では、ウイルスへの曝露から最長15年にわたって神経変性疾患の発症リスクの上昇と有意に関連していた。なお、神経変性疾患を予防する作用を持つウイルスは見つかっておらず、すべてのウイルスが神経変性疾患の発症リスクの上昇と関連していた。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中