最新記事

インド

インド初「パパ」が元気な赤ちゃんを出産 世をざわつかせるマタニティフォト

2023年2月19日(日)14時27分
佐藤太郎

YouTube/Zee News English

<養子縁組の手段も考えたがインドでは難しい。まだ卵巣と子宮があったザハドさんは男性への移行治療を中断して、パートナーと子作りに励んだ。SNSでは賛否の声が上がっている>

インドで2月8日、この国で初めてトランスジェンダーのカップルに子供が誕生した。香港英字紙SCMPやThis Week in Asiaなど複数メディアが報じている。

出産したのは、ケララ州コジコーデに住むザハドさん(23)。女性として生まれたが、自認する性別は男性だ。数年前から男性になるための性別適合手術を進めていたが、その最中に、パートナーとの間に子供が欲しいと思うようになり、念願叶って3人家族となった。

出産予定日の3月上旬より数週間早まったが、2,900グラムの元気な赤ちゃんが無事に生まれた。

子供は欲しいが養子縁組は難しい...

ザハドさんはすでに乳房を切除し、ホルモン投与で声は低くなり、口ひげが生え、筋肉質な体に変わりつつあった。次は、いよいよ女性の生殖器の摘出を控えたタイミングだった。

しかしどうしても子供への思いは捨てきれない。養子縁組の手段も考えたが、インドではトランスジェンダーカップルの自分たちが置かれる状況からすると現実的には難しい。

ザハドさんにはまだ卵巣と子宮があった。2年交際を続けたパートナーのジヤ・パベル(21)さんと話し合い、男性への移行治療を中断し、子作りに励むことを決めた。

新米ママは「幸せの涙」を流した

赤ん坊を迎え、パベルさんはママになった。インスタグラムの投稿で「幸せの涙」を流したと書いている。赤ちゃんには病院のミルクバンクから母乳が提供される予定だ。



出産した日にThis Week in Asiaの取材に応えたザハドさんは、「おなかがどんどん大きくなっていくので、自分の体がとても不思議で気持ち悪いと感じました」と語った。「それでも私たちは子供が欲しかったし、私にとって出産は、生物学的に母親になるということと同時に、今後、男性への移行治療が完了すれば父親にもなれるチャンスだったのです」

ザハドさんはキリスト教の家庭に生まれ育った。母親は、最初は娘が男性になるのを渋っていたが、今は我が子のアイデンティティと孫の誕生を受け入れている。

一方、パベルさんはそれほど幸運ではなかった。イスラム教徒の両親と兄弟に、幼い頃から敬遠されてきた。親戚がコーランの一節を引用して、「私のような人間」には地獄のような来世が待っていると警告してきたこともあった。

「私の親族は私が受ける罰について、あらゆる恐ろしいイメージを持っていましたが、私にとってそんなことはどうでもいいんです。私は自分が何者かを知っています。ザハドと一緒にいて幸せだし、赤ん坊のママになるなんてもっと幸せです」と、パベルさん。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中