最新記事

アフガニスタン

「日常生活は地獄」......しかし、タリバンは、アフガニスタン初の国産スポーツカー発表

2023年1月20日(金)11時30分
佐藤太郎

アフガニスタン製のスポーツカー ENTOPのインスタグラムより

<アフガニスタンは、初めての国産スポーツカーを発表した......>

アフガニスタンは、初めての国産スポーツカー(と思われるもの)を発表し、タリバン関係者はその功績を讃えている。

1月15日に、タリバンの報道官ザビフラ・ムジャヒド(Zabihullah Mujahid)は、件の車の動画をツイッターに投稿した。アフガニスタンのニュースチャンネル「Tolo News」が伝えるところによると、「Mada 9」と名付けられたこの車。アフガニスタン製のスポーツカーは初めてのことという。

報道官ザビフラ・ムジャヒドの「この車は国にとって名誉なこと」というコメントを英テレグラフ紙が伝えている。

Tolo Newsによると、「Mada 9」はEntopという企業と、アフガニスタン技術職業訓練機関 (ATVI) のエンジニアとデザイナー30人から成るチームが共同で開発した。5年を費やしたそうだ。

まもなく電動化に対応する予定で、Entopは、アフガニスタン国内での販売を経て世界でに広める計画だと、タイムスオブインディアが伝えている。しかし量産時期については明らかになっていない。価格や車両の性能、仕様やスピードについても口を閉ざしている。

「Mada 9」の設計者であるモハンマド・リザ・アフマディ(Mohammad Riza Ahmadi)はTolo Newsに対し、この車が国の難局を救う道標になることを望んでいる。「この車は大使となり、アフガニスタン全土を走り、人々に知識の価値を伝えるだろう」と。

とはいえ謎が多すぎる。タリバンの報道官が共有したビデオ以外には、この車が高速で移動したり、難しい操縦をしたりする映像はない。

ATVIのGhulam Haidar Shahamat校長は、このエンジンは運転手が速度を上げることができるほど「強力」だと語っている。しかし、このエンジンは2000年製のトヨタ・カローラのものという。

スポーツカーを作っている場合か

アフガニスタンは2021年8月にタリバンが国を占領して以来、経済が崩壊している。米国平和研究所によると、同国の経済は政権支配下の1年間で20~30%縮小した。

2021年10月から2022年1月の間に100万人以上のアフガニスタン人が国外に脱出したと、ニューヨーク・タイムズ紙が移民研究者の話を引用して報じた。

2022年1月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、同国の悲惨な現状について、各国に警鐘を鳴らした。「タリバンによる占領から6カ月、アフガニスタンの人々にとって、日常生活は地獄と化している」

スポーツカーが、アフガニスタンの人々の生活を救うメシアになるとは考えにくいだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中