最新記事

東西の壁

フィンランドがロシア国境に「壁」を建設

Finland Plans Border Wall With Russia to Stop Migrant Crossings

2022年10月20日(木)16時47分
ジュリア・カーボナロ

ロシアの報復を警戒するマリン首相 Lehtikuva/Antti Yrjonen/REUTERS

<NATOに加盟申請した日からロシアの「天敵ナンバーワン」になったフィンランド。マリン首相は「壁」建設計画案について議会の支持を得られると自信を見せた>

フィンランドのサンナ・マリン首相は10月18日、東部のロシアとの国境沿いにフェンス(柵)を建設する案について、議会内に「幅広い支持」があると確信していると述べた。国境警備隊が作成した建設計画は、約1335キロメートルに及ぶロシアとの国境(欧州連合の加盟国の中で最長)に沿って、一部区域にフェンスを建設する内容だ。

フェンスの総延長は最大で約260キロメートルで、その大半は国境検問所があるフィンランド南東部に設置される。まずは約3キロメートルの試験区間に建設し、問題点の検証などを行う。フィンランドでは来年4月までに議会選挙が行われるため、工事の計画全体についての決定は、2023年に発足する次期政権が行うことになる見通しだ。建設工事の期間は3~4年。国境管理当局の推定では、建設費用は数億ユーロにのぼるとされている。

現在、フィンランドとロシアの国境は木製のフェンスで仕切られている。だがロシアによるウクライナ侵攻を受けて、フィンランドが長年の軍事的中立の立場を転換してNATO加盟を申請したことで、両国間の緊張は高まっている。フィンランドは、ロシアが移民を送り込む形で政治的圧力をかけてくる可能性を懸念している。

徴兵を逃れたいロシア人の入国が急増

ロシアのウラジーミル・プーチンが9月下旬に部分動員令を発令したことで、突如として移民流入の見通しが現実的なものになった。

そこでフィンランド政府は9月末、ロシア人旅行者の入国を「当面の間」禁止すると発表。直前の週末には、徴兵を逃れるために国外を目指すロシア人、推定1万7000人がフィンランドに入国していた。

【動画】戦争前夜フィンランドとロシアの国境

マリンは18日、フェンス建設案について議員団との話し合いを行った後の記者会見で、「東部の国境を適切に監視することが重要だ」と述べ、さらにこう続けた。「効果的かつ適切な国境管理を行うために、国境警備隊に十分なサポートが提供されるようにしたい。それに加えて、万が一の事態への備えも必要だ」

フィンランド議会は7月に、ロシアとの国境管理を強化する法改正案を可決。これにより、新たなフェンスの建設が認められることになった。

野党・真正フィン人党のリーカ・プーラ党首は本誌に対して、「真正フィン人党が政治活動を展開し、圧力をかけたことを受けて、フィンランド議会は今夏、東部の国境を一時的に閉鎖し、難民申請プロセスの保留を認める内容の法案を可決した」と本誌に述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、通算5期目始動 西側との核協議に前

ワールド

ロシア裁判所、JPモルガンとコメルツ銀の資産差し押

ビジネス

UBS、クレディS買収以来初の四半期黒字 自社株買

ビジネス

中国外貨準備、4月は予想以上に減少 金保有は増加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中