最新記事

イギリス

ジョンソン英首相は「なぜ今」辞任するのか

Britain Finally Turned on Johnson

2022年7月11日(月)15時40分
アイマン・イスマイル(スレート誌記者)
ジョンソン英首相

首相官邸前で辞任を表明するジョンソン英首相(7月7日) HENRY NICHOLLSーREUTERS

<「イギリス人にも説明できない」「イギリス人は偽善が大嫌い」......数々のスキャンダルを乗り越えてきたジョンソンが、突如、追い詰められたのはなぜか。外国人には分かりにくいイギリス人の複雑な感情とは>

ボリス・ジョンソン英首相にとって、先週はとても、とても、悪い1週間だった。

党首を務める保守党の不信任投票を6月に乗り切り、首相の座に居座ろうと思っていた矢先に、辞任を表明する事態に追い込まれたのだ。

そもそも保守党で不信任投票にかけられるきっかけになったのは、いわゆる「パーティーゲート」で新たな事実が次々と発覚してきたからだ。

コロナ禍で国民に厳しい外出規制を強いていた時期に、首相官邸でパーティーが開かれていたこと、そこにジョンソンも出席していたこと、それについて嘘をついていたことが、少しずつ明るみに出た。

それでも不信任投票を乗り切ったのに、今度は別の不祥事が浮上した。ジョンソンが保守党幹部に起用した人物が最近、酒に酔って男性に痴漢行為を働いたことが発覚し、辞任に追い込まれたのだ。

さらにその後、ジョンソンがこの人物の問題行動について、事前に報告を受けていたことが明らかに。それについてジョンソンは「忘れていた」と釈明し、ますます集中砲火を浴びることになった。

こうして7月7日、ついにジョンソンは辞任を表明した。

一方で、アメリカをはじめ外国から見ると、「なぜ今なのか」という疑問も否めない。なにしろジョンソンは、これまでもっと重大に見えるスキャンダルを乗り越えてきた。

ブレグジット(イギリスのEU離脱)を推進するために、「EUから離脱すれば国民保健サービス(NHS)の収入が週3億5000万ポンド増える」と嘘をついたときしかり。

ブレグジットをめぐる混乱で、議会を5週間にわたり閉会するよう女王に直接提案して、英最高裁に違法と判断されたときしかり。

首相官邸を改修するため、保守党の大口献金者に約20万ポンドの寄付を求めたときしかり。

それでもジョンソンは首相の座を守ってきた。

【関連記事】「奥さんの胸はもっと大きくなる」ボリス・ジョンソン英首相迷言集

今回は何が違うのか。

政治ニュースサイト「ポリティコ・ヨーロッパ」のイギリス担当記者エスター・ウェバーに、米スレート誌のアイマン・イスマイルが話を聞いた。

◇ ◇ ◇


――なぜジョンソンは今、辞任することになったのか。

突然の出来事のように感じられるのは無理もない。ただ、イギリスでは、じわじわと進んでいたものが、一気に加速したという感覚が強い。

この半年間、ジョンソンの指導力にはずっと疑問符が付けられていた。その最大の原因はパーティーゲートだろう。

国民の多くがこの事件には非常に憤慨していて、保守党内でも、このままジョンソンを首相にしていていいのかという疑問が浮上した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中