最新記事

銃規制

「全体主義の独裁国家だ」──トルドーの拳銃規制法案に米保守派の阿鼻叫喚

Trudeau's Gun Ban Sparks Panic Among U.S. Conservatives: 'Dystopian Future'

2022年6月1日(水)16時52分
ダラー・ロシュ

テキサスの小学校で起きた銃乱射事件を見て、拳銃所有を禁止する法案を提出したトルドー Blair Gable-REUTERS

<テキサスの銃乱射事件を見たカナダのトルドー首相が、これまでの自動小銃に加えて拳銃の所有も禁止する法案を提出すると、この世の終わりのようなありえない警告や陰謀論がアメリカの保守派から飛び出した>

カナダのジャスティン・トルドー首相が提案した新たな銃規制について、米国の保守派は強い口調で非難し、米国でも同様の厳しい規制が課されることへの懸念を表明した。ある議員は、「ディストピアな未来」を警告している。

トルドーは5月30日、拳銃の所有を全面的に禁止する法案を議会に提出した。カナダではすでに、1500種類を超える自動小銃が禁止されている。

「カナダでは今後、拳銃の売買、譲渡、輸入を禁止したい」とトルドーは言った。

米テキサス州ユバルディの小学校で5月24日に起きた銃乱射事件を受けた動きだ。この事件では、19人の児童と2人の教師が犠牲になった。

米国の保守派は、カナダのこの法案を強く批判しており、米国でも同様の対策が取られるのではないかとうろたえる様子も見られた。

ケンタッキー州第4区のトーマス・マッシー下院議員は、次のようにツイートしている。「トルドーがカナダにもたらそうとしているディストピア的な未来は、もし米国民が止めなければ、米国にもやって来るだろう」

ノースカロライナ州第9区のダン・ビショップ下院議員は、トルドーの発言の一部を動画で共有し、次のように書いている。「米国の憲法は、神からの贈り物だ。独裁主義に対する防波堤だ。米国民だけが享受できる利益だ。米国例外主義の根底にあるものだ。守り抜くことができるだろうか?」

フロリダ州第1区のマット・ゲーツ下院議員もトルドーの動画を共有し、カナダ国歌のパロディーとしてこう書いた。「真の北国、堅固にして(不)自由なり」

保守派団体アクト・フォー・アメリカの創設者でもあるブリジット・ガブリエル会長は、トルドーの行動を、米民主党の銃規制支持と関係づけた。

「カナダは、まず『軍事用自動小銃』を禁止し、今度は拳銃を禁止しようとしている」とガブリエルはツイート。「『自動小銃』だけを禁止したいと言うアメリカの民主党議員は全員、嘘をついている」

テネシー州第5区の下院議員に立候補しているロビー・スターバックは、「AR-15自動小銃だけを規制するという左派の言葉を信じてはいけない。それで終わるはずがないからだ」と書いている。

「カナダを見ればわかる。2020年、彼らはAR-15を禁止した。それから2年と3週間後、彼らは拳銃も禁止しようとしている。これが民主党の計画だ。彼らにだまされてはいけない。合衆国憲法修正第2条の権利(武器保有権)を侵害させてはいけない!」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中