最新記事

ゲーム

ゲームと現実の奇妙な類似...コロナ禍の世界に『デス・ストランディング』が教えること

The Real-life Lessons of “Death Stranding”

2022年4月15日(金)17時17分
クレア・パーク(ニューアメリカ財団オープン・テクノロジー研究所プログラムアソシエート)
『デス・ストランディング』

配達人のサムは訪れた町を通信網につなぎつつアメリ救出を目指す SONY INTERACTIVE ENTERTAINMENT/KOJIMA PRODUCTIONS–SLATE

<人気ビデオゲーム『デス・ストランディング』は、新型コロナで分断された現実世界の住民たちに、人と人がネットワークでつながることの意味を問い掛ける>

人気ビデオゲーム『デス・ストランディング』(コジマプロダクション制作)を友人から勧められたのは昨年秋のこと。高速通信網の整備に650億ドルを投資することなどを定めたインフラ投資法案がアメリカ連邦議会で可決・成立したのと同じ頃だった。

プレーを始めてから数分で、私好みのゲームではないことに気付いた。没入感が強すぎたし、大型モンスターや殺し屋の類いがそこらじゅうをうろうろしているのも気に入らなかった。その一方で、誰もがインターネットを使える「ユニバーサルアクセス」の実現を目指して働いている筆者にとって興味深い部分が数多くあった。

このゲームが発売されたのはコロナ禍が始まる前の2019年11月だが、パンデミックとそれに伴う都市封鎖によって、現実の世界とゲーム世界の間に類似点がいくつも生まれた。そこから、ネットワーク通信の本質が見えてくる。『デス・ストランディング』制作者の小島秀夫は、つながることの大切さがこのゲームのメインテーマの1つだと繰り返し語っている。

この春、新たに拡張要素を加えたPC版の『デス・ストランディング ディレクターズカット』が発売された。米政府が高速通信整備費の分配計画を策定している今、あらゆる人が高速インターネットに接続できることの大切さをこのゲームを通して考えてみたい。

怪現象で荒廃した近未来のアメリカが舞台

『デス・ストランディング』の舞台は近未来のアメリカだ。恐るべき怪現象のせいで世界は荒廃し、外を出歩くのは非常に危険になっている。主人公サムは危険を冒しつつも離れた場所にいる人に荷物を届ける「配達人」だ。義理の母である大統領とその娘アメリから、キューピッドと呼ばれる特殊装置を用いて全米各地の町を通信ネットワークにつなぐよう依頼される。

ゲーム内でも過去2年間の現実世界でも、外に出て他の人々とじかに会うことは命の危険を伴う。そうした状況下では、ネットワーク通信にアクセスできるかどうかが非常に重要になってくる。現実世界においてインターネットは、人々が他人と距離を取りつつリモートで仕事を続け、学校の授業を受け、国からの支援金を受け取り、医師の診察を受けるのに欠かせないツールであり続けている。

そして『デス・ストランディング』から分かるのは、ネットへのアクセスを広げることの重要性だ。この世界では怪現象が起きたことで橋や道路といった基本インフラが破壊され、人々は分断され孤立している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

2日に3兆円超規模の円買い介入の可能性、7日当預予

ワールド

OECD、英成長率予想引き下げ 来年はG7中最下位

ビジネス

海運マースク、第1四半期利益が予想上回る 通期予想

ビジネス

アングル:中国EC大手シーイン、有名ブランド誘致で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中