最新記事

ウクライナ情勢

ロシア軍侵攻、ウクライナの人々は日本に何を求めているのか

2022年3月2日(水)18時19分
志葉玲(フリージャーナリスト)

その他、タックスヘイブン(租税回避地)にプーチン大統領やその親族等が隠し持っているとされる財産の特定とその凍結、国連安保理で、ウクライナ侵攻非難決議に拒否権を発動したロシアを常任理事国の任を解くことも検討されることなども重要だろう。

家族がキエフに―悲痛な訴え

shiva20220302173403.jpg
プーチンをヒトラー化させたプラカードや、「ロシア=プーチンではない、プーチンを止めろ」との呼びかけも(筆者撮影)


shiva20220302173404.jpg
「お金がなければ戦争もできない」と対ロシア制裁を求めるデモ参加者(筆者撮影)

抗議集会参加者らにも個別に話を聞いた。いてもたってもいられず、富山県から、この日のために来たという40代の在日ウクライナ人男性は「両親がキーウ(ウクライナ首都キエフ)にいる。心配でたまらない」と言う。欧米等の対ロシア制裁について「もっと早くから行ってほしかった」と語り、「とにかく世界全体がロシア封じ込めをすること」がプーチン大統領の暴走を止めるため必要だと訴えた。

妹夫婦とその子どもがキーウにいるという在日ウクライナ人女性は「妹の家の近くで2回も大きな爆発があったそうです」と涙ながらに言う。「皆、地下シェルターに隠れ、息を潜めています。でも、いつまでもつかどうか...早く戦争を止めてほしい」(同)。

shiva20220302173405.jpg
子ども達も平和を訴え(筆者撮影)

ウクライナのお菓子などを日本に輸入し販売しているという在日ウクライナ人女性は「日本のメディアでは、ウクライナがNATOに参加することを嫌ってプーチンが侵攻したと報道されていますけども、実際はもっと別の問題があると思います」と語る。「ウクライナが民主化されて、EUと関係を深めているのが、プーチンは気にいらないのだと思います。変化していくウクライナを見て、ロシアの人々がプーチンの独裁に疑問を持つようになるのが、怖いのだと思います。私達は、(かつてウクライナもその一部だったソビエト連邦時代のように)ロシアに支配されたくない。それが全てのウクライナ人の気持ちだと思います」(同)。

抗議集会でマイクを握った在日ウクライナ人の女性は「今の戦争はウクライナとロシアだけの問題ではありません。欧州や米国、日本、民主主義を大切にしようとしている全ての国々の問題です」と訴える。「今、プーチンが殺そうとしているのは民主主義、自由、平和です。プーチンを止めろ!」(同)。

(筆者撮影)

ウクライナ侵攻は、同国軍の善戦により、ロシア側の当初の計画より遅れていると報道されているが、ロシア軍がなりふり構わず、人口密集地に無差別攻撃を行えば、民家員人被害は甚大なものとなるだろうし、既にそうなり始めている。日本を含む国際社会はプーチン大統領への効果的な圧力を強めていくことを急ぐべきだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財務長官、ノンバンク住宅ローン業界の対策強化を訴

ビジネス

再送-インタビュー:金利も市場機能働く本来の姿に=

ビジネス

アマゾンやファイザーが対仏投資計画、モルガンSはパ

ビジネス

シティ、インドの投資判断を引き上げ 安定収益と経済
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中