最新記事

ミャンマー

ミャンマーのヒスイ鉱山で土砂崩れ100人行方不明 地獄の環境で繰り返す悲劇

Landslide at Myanmar Jade Mine Kills One, Leaves at Least 70 Others Missing

2021年12月23日(木)16時44分
アーロン・マクデード
土砂崩れがあった場所

積み上げられた土砂や産業廃棄物が崩れ落ちて大勢の作業員が巻き込まれた TRT World Now-YouTube

<普段から積み上がった土砂のそばで寝泊まりする危険な職場で、不法労働者も多く身元は永遠にわからない可能性も>

ミャンマー北部のカチン州にあるヒスイ鉱山で土砂崩れが発生。複数の当局者によれば、これまでに1人の死亡が確認され、少なくとも70人の行方が分からない状態で、捜索活動が続けられている。

土砂崩れが発生したのは12月22日の早朝だ。近くにある別の複数の鉱山に積み上げられていた大量の土砂や廃棄物が、約60メートル下で採掘作業を行っていた作業員たちの上に崩れ落ち、彼らを巻き込んで湖に流れ込んだ。


現地捜索隊の責任者はAP通信に対して、「救助隊員と消防隊員、およそ150人態勢で捜索活動を行っており、これまでに鉱山作業員1人の遺体を発見した。引き続き、捜索を行っていく」と述べた。また報道によれば、付近の3つの店舗が土砂に埋もれる被害を受けた。これらの店には当時、少なくとも5人の若い女性がいたとされている。

この大惨事が発生したのは、世界で最もヒスイの埋蔵量が多い地域のひとつである、カチン州のパカン地区だ。ヒスイ産業に関する腐敗の横行から、軍はこの地域でのヒスイ採掘を禁止していたが、一部の企業は今も違法な採掘を続けている。

小規模な違法採掘が横行

同地区のヒスイ鉱山ではここ数年、ほかにも複数の事故が発生している。2020年7月の地滑りでは少なくとも162人が死亡し、2015年11月の事故では113人の死者が出ている。2015年の事故では、約60メートルの高さに積み上げられた土砂や廃棄物が夜間に崩れ、作業員たちが寝ていた少なくとも70棟の小屋が破壊された。

現地からの報道はきわめて乏しい状況だ。世界のヒスイ産業の中心地であるパカン地区は、ミャンマー軍と、独立を求めるゲリラ組織との間で散発的な戦闘が起きていることでも知られている。

パカン地区は、ミャンマーの最大都市ヤンゴンから約965キロメートル北に位置するカチン州にある人里離れた山岳地帯だ。ミャンマー政府とゲリラ組織との間では停戦合意が結ばれているが、2021年2月1日に軍がクーデターを起こし、アウン・サン・スー・チー国家顧問率いる(選挙で選ばれた)政府を追放して以降、この合意は守られていない。

この地区にある複数の鉱山は、カチン州を拠点とするゲリラ組織「カチン独立軍」の主な資金源でもある。

同地区の市民グループのある当局者(匿名)によれば、これらの鉱山では20~50の企業が違法な採掘を行ってきた。採掘作業については、長年その安全性が懸念されており、数年前に採掘免許が停止されたことで、さらに劣悪な環境下での違法な小規模採掘が横行している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国不動産株が急伸、党中央政治局が政策緩和討議との

ビジネス

豪BHP、英アングロへの買収提案の改善検討=関係筋

ビジネス

円が対ドルで5円上昇、介入観測 神田財務官「ノーコ

ビジネス

神田財務官、為替介入観測に「いまはノーコメント」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中