バイデンはどうすれば「失敗大統領」にならずに済むか

UNDER PRESSURE

2021年12月18日(土)15時55分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

バイデンは10月28日、ホワイトハウスで同法案の新たな枠組みを発表した際にこう言った。

「私を含め、誰も望んだものを全て手に入れることはできなかった。しかし、それが妥協であり、合意形成なのだ」

法案が議会を通過しなかった場合、バイデンはどうするのか。

政治アナリストや民主党関係者は、中間選挙後に議会で多数派となった共和党との連携に軸足を移すのではないかと疑っている。

共和党は揺さぶりをかける「攻撃対象」として、下院民主党の47人をリストアップしている。その大半はオハイオ州のティム・ライアンやテキサス州のヘンリー・クエラーなど、昨年の大統領選でトランプが勝ったか僅差で負けた選挙区の穏健派だ。

一方、アレクサンドリア・オカシオコルテス(AOC)や進歩派の議員連盟プログレッシブ・コーカスの会長プラミラ・ジャヤパルらは中間選挙で生き残る可能性が高く、共和党と協力する気はほとんどない。

民主党はバイデンの看板法案を可決できなければ、自分たちの大統領が就任1年目で「失敗」の烙印を押される可能性に直面することになる。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、バイデン自身も修正案を発表した朝、下院民主党グループを前にこう語っている。

「上下両院の(民主党の)過半数も私の大統領職も、これで決まると言っても過言ではない」

現代の大統領で「ひどい失敗」とされているのは、ジミー・カーター(1977~81年)が最後だ。ただし、民主党は1978年の中間選挙で上院3議席、下院15議席を失っただけで、両院の過半数を堅持した。

カーターが「失敗」と見なされるようになったのは、1980年にイランでのアメリカ人人質救出作戦が悲惨な結末を迎えた後のことだ。

来年の中間選挙で敗北すれば、79歳のバイデンは事実上のレームダック(死に体)になりかねず、2024年の再出馬についても疑念が広がる。

共和党が上下両院を制すれば、あらゆる立法措置の決定権を握れる。トランプ弾劾の意趣返しとして、アフガニスタンでの致命的失敗や南部国境での対応をめぐり、バイデン弾劾に乗り出す事態も考えられる。

進歩派と穏健派の大きな溝

従って民主党の目下の主要関心事は、バイデンはどうすれば「失敗大統領」にならずに済むかだ。

政権や議会、民主党の関係者、政治学者によれば、まだ挽回の時間はある。しかし、そのためには現在審議中の法案を中心に断固とした態度で、かつ迅速に行動する必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中