最新記事

仮想通貨

取引所から「消える」ビットコイン、過去最高値の裏で起きていること

2021年11月22日(月)16時42分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)

ビットコインの場合、10月に一時的に流入がみられた後、11月に流出が加速しました。

211120kr_ocar04.png

「ビットコインの取引所からの流出入額(赤・緑色の範囲)」(青色の線はビットコイン/米ドルのレート、出典:Kraken Intelligence)

現在の取引所のビットコイン保有量は、30日前と比べてマイナス33億ドルです。長期保有目的でビットコインを取引所からコールドウォレットなどに移す投資家が増えていることを、こちらのデータも示唆しています。

11月10日のビットコイン最高値更新は、長期保有者の増加にもかかわらず達成された記録更新であり、さらなる高値を更新しないと満足しないという投資家心理が表れていると言えそうです。

イーサリアムの方も似たような傾向です。

11月16日に仮想通貨市場全体が9%ほど下落したにもかかわらず、イーサリアムの長期保有傾向は加速されました。イーサリアムの取引所からの流出額はマイナス44億4000ドルで、執筆時点で過去最高の流出額を記録しました。

211120kr_ocar05.png

「イーサリアムの取引所からの流出入額(赤・緑色の範囲)」(青色の線はイーサリアム/米ドルのレート、出典:Kraken Intelligence)

ビットコイン同様、イーサリアムのさらなる最高値更新への期待が高まっており、投資家がこれまでになく強気で自信を持っている証左であると考えられます。

「プエル・マルチプル」 Puell Multiple

最後に、マイナーの動向についてみてみましょう。

マイニング報酬として絶えず現物のビットコインを獲得するマイナーが、ビットコインの売り時がいつと考えているかを知ることは、相場分析において重要になってきます。

ここで注目なのが、プエル・マルチプルです。これは、一日あたりのマイナーの売上高を、一日あたりのマイナーの売上高の365日移動平均で割った値です。

211120kr_ocar06.png

プエル・マルチプルが0.5を下回ると、歴史的にビットコインが底値をついてマイニングの利益率が持続的でないほど低水準まで落ち込んだことを意味します。対照的に3を上回れば、歴史的にはマーケットのサイクルの頂点と時期が一致しており、利益確定の絶好のタイミングと解釈できます。

211120kr_ocar07.png

「ビットコインのプエル・マルチプル(緑色の線)」(黒色の線はビットコイン/米ドルのレート、出典:Kraken Intelligence)

現在のプエル・マルチプルは、1.46。マイナーは十分に利益を上げている状態であるものの、マーケットの頂点ではありません。このため、マイナーは、利益確定の売りをするより、ビットコインの保有を継続する可能性が高いと考えられます。

参考: November 2021 Crypto On-Chain Digest

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

クレディ・スイス、韓国での空売りで3600万ドル制

ビジネス

4月消費者態度指数は1.2ポイント低下の38.3=

ワールド

香港中銀、政策金利据え置き 米FRBに追随

ワールド

米副大統領、フロリダ州の中絶禁止法巡りトランプ氏を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中