最新記事

中国共産党

謎の失踪から3年、孟宏偉ICPO前総裁の妻が「中国政府は怪物」と痛烈批判

Wife of Missing Chinese Official Calls Government a 'Monster'

2021年11月19日(金)17時10分
アリス・メスマー
孟宏偉ICPO前総裁

ICPO本部前で英チャールズ皇太子らと記念撮影する孟(2018年5月) Jeff Pachoud/Pool via Reuters

<3年前に中国で突如として連絡を絶ったICPO(インターポール)前総裁。その妻が、夫は改革を志したため「追い落とされた」と政府を批判>

2018年まで国際刑事警察機構(インターポール)の総裁を務めていた孟宏偉(メン・ホンウェイ)の妻であるグレース・メンはこのたび、夫の失踪について語り、中国政府は彼女の家族と国に損害を与える「怪物」だと非難した。

彼女は現在、政治亡命者として、双子の息子たちとフランスで暮らしている。24時間体制で監視されているが、彼女はこの状況について、中国の工作員が誘拐を企てているためだと考えている。

グレースは、AP通信の独占インタビューで初めて顔を見せ、家族を引き裂かれた原因として、中国の腐敗したシステムについて率直に語った。「私には、世界に対して自分の顔を見せ、何が起きたかを語る責任がある。私はこの3年間で『怪物』、つまり権力との付き合い方を知った。ちょうど、新型コロナウイルス感染症との付き合い方を知ったように」と、グレースはインタビューで語った。

グレースは中国政府を「怪物」と呼んだ。「彼らは、自らの子供たちを食らう」からだ。

身の危険を示す包丁の絵文字が

グレースの夫である孟は2018年、67歳のときに失踪した。彼女が夫から最後に受けた連絡は、2018年9月25日、北京出張中だった夫から届いた2つのテキストメッセージだ。最初のメッセージには、「私からの連絡を待ってくれ」と書かれており、その4分後、危険が迫っていることを示唆する包丁の絵文字が送られてきた。

それ以降は音信不通だ。グレースの弁護士から中国当局に、複数の書簡を送ったが、そちらにも返信はない。夫が生きているかどうかさえわからない、と彼女は述べている。

「子供たちには父親が必要だ」とグレースは涙を流した。「誰かがドアをノックすると、子供たちは必ず見に行く。ドアから入ってくる人物が父親であることを期待しているのだと思う。しかしそのたびに、父親でないことを知り、静かにうなだれる。彼らはとても勇敢だ」

2018年10月、孟が詳細不明の法律違反で調査を受けているという声明が発表された。中国高官が公職から追放される前兆だ。その後インターポールから、孟が総裁を直ちに辞任すると発表され、グレースは疑念を抱いた。

「これは偽造された事件だ。政治的な意見の相違が刑事事件に発展した一例だ。中国の腐敗は、極めて深刻な状態にあり、まさにまん延している。しかし、腐敗を解決する方法には2つの異なる意見がある。1つ目は、現在行われているような方法。2つ目は、問題を根本から解決するため、立憲民主主義に移行するというものだ」とグレースは語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ休戦交渉、イスラエルの条件修正が暗礁原因=ハマ

ビジネス

アングル:4月CPI、利下げに向け物価情勢好転待つ

ワールド

米、ウクライナ防衛事業基金に20億ドル ロシア領内

ワールド

米、今秋に中国製「つながる車」規制案 商務長官「安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中