最新記事

中国

河野太郎に好意的な中国──なぜなら「河野談話」否定せず

2021年9月12日(日)19時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

そこには以下のようなことが書いてある。

――注目すべきは、河野太郎氏の父親である河野洋平氏(元内閣官房長官)は、有名な「河野談話」の中で、第二次世界大戦中に日本軍が慰安所を設置し、他国の女性を「慰安婦」として強制的に働かせていたことに日本軍が直接関与していたことを認めていることだ。 河野太郎氏は10日(の記者会見で)、「河野談話」に代わる新たな「談話」を作るつもりがあるか否かという質問に対して、「自民党政権から引き継がれてきた歴史認識を引き継ぐ」と答えた。 (引用ここまで)

つまり、河野氏は「自民党政権から引き継がれてきた歴史認識を引き継ぐ」と言っただけで、「いえ、河野談話は引き継ぎません」とは言わなかったことに中国は注目しているのである。

何と言っても河野洋平氏は6月27日のコラム<河野太郎の父・河野洋平等が建党百年に祝電――中国共産党万歳!>に書いたように、中国共産党建党百周年記念に向けて祝電を送ったことで有名だ。中国はこのことを非常に喜んでいる。

だからこそ、環球網は河野太郎の現状を知らせるに当たり、「日本の産経新聞社と日本のフジテレビ・ニュース社が共同で実施した世論調査では、河野太郎氏が4ヶ月連続で次期首相候補のトップになっている。読売新聞が6日に発表した世論調査によると、太郎氏は18歳から29歳の間で32%の支持を得て、他の候補者よりも圧倒的に優位に立っています」と応援歌丸出しなのである。

環球網は9月10日の19:13時点での速報でも<河野太郎が日本の自民党総裁選へ立候補を表明  日本のメディアの世論調査で最有力候補>と、わざわざ「世論調査でトップ」ということを見出しで強調している。

中国の他の報道も「慰安婦問題」に注目

9月10日の「北京日報」は<日本の「ワクチン大臣」河野太郎が首相選に参戦、父親は慰安婦問題を承認>というタイトルで河野氏の総裁選立候補表明を報道している。

タイトルそのものに「慰安婦問題」とあるので、当然のことながら、「河野談話」が強調されていることがわかる。

そこには以下のように書かれている。

――記者から河野太郎の歴史問題に対する立場を聞かれ、彼は「自民党の一貫した立場に従う」と答えた。 河野太郎の父である河野洋平が内閣官房長官だった1993年に発表した「河野談話」は、「慰安婦問題」に関する調査結果に関して発表した談話で、朝鮮半島や中国などに「慰安所」を設置し、現地の女性を集めて強制的に「慰安婦」として充当したことに日本軍が直接関与したことを認め、そのことに対して謝罪と深い反省を示したものだ。「河野談話」は、「慰安婦問題」に関する日本政府の公式見解となった。(引用ここまで)

「河野談話」に関しては、事前に韓国とすり合わせていたといった情報があり、少なからぬ異論が出たものの、情けないことに歴代内閣は(渋々ながらも)「河野談話」を継承するとの立場を示してきている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱UFJFG、発行済み株式の0.68%・1000

ワールド

中国、台湾新総統就任控え威圧強める 接続水域近くで

ワールド

米財務省、オーストリア大手銀に警告 ロシアとの取引

ビジネス

MUFG、今期純利益1兆5000億円を計画 市場予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中