最新記事

領有権争い

南シナ海に260隻で居座り続ける中国船の傍若無人

China Militarizing South China Sea with Warships and Militia

2021年4月15日(木)19時15分
ジョン・フェン
南シナ海のガベン礁周辺に集結した中国船(4月11日)

ガベン礁周辺に集結した多数の中国船(4月11日)NFT-WPS

<フィリピンの抗議を無視して、海軍と海警局の公船、海上民兵の乗る漁船が集結、居座っている>

南シナ海の軍事化に拍車をかける中国の動きに警戒感が高まっている。先月から多数の中国船がフィリピンに近い海域に集結。フィリピン当局は自国の排他的経済水域(EEZ)も含め、周辺国が環礁の領有権を主張する海域に今なお261隻の中国船が居座っているとして抗議の声を上げた。

フィリピンのテオドロ・ロクシン外相は4月14日、同国の西フィリピン海国家機動部隊が中国船のEEZ侵犯を確認したことを受け、外交ルートを通じて中国政府に抗議したことを明らかにした。

同機動部隊はフィリピンが排他的な漁業権を主張する南シナ海の東側の海域の警備に当たっている。11日に行ったパトロールで、中国の「海上民兵」が乗り込んだ漁船240隻が南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島の環礁周辺などに停泊していることを確認した。海上民兵は中国海軍で軍事訓練を受けたと見られる漁民らで、中国海軍と沿岸警備に当たる海警局と共に、中国の海洋進出の一翼を担っているが、中国政府は彼らの乗る漁船団の暗躍を否定している。


フィリピンEEZで堂々と違法操業

13日の発表によると、機動部隊は南沙諸島のガベン礁周辺に136隻、ケナン礁周辺に65隻の中国船が集結しているのを確認。残りはフィリピンの主張するEEZ内の7つの環礁の周辺に停泊していたという。

機動部隊はさらに、中国が実効支配するスカボロー礁(中国の名称は民主礁または黄岩島)の周辺に、海上民兵の乗る艇長60メートル程の漁船が10隻停泊しているのを発見した。その近くでは中国海軍の戦艦2隻と中国海警局の公船3隻も確認された。

中国が人工島を造成して占拠している南沙諸島のミスチーフ礁、ファイアリークロス礁、スービ礁の周辺でも、タイプ22紅稗型ミサイル艇のペア(コルベット艦とタグボート)がそれぞれ1組確認され、その日に目撃された中国海軍の船舶は合計6隻となった。加えてフィリピンが実効支配するパグアサ島周辺にも、中国海警局の船が2隻停泊していた。

「これら全ての中国海軍の戦艦は、この海域の軍事化に貢献するものだ」と、フィリピン当局は声明を発表。自国のEEZで240人強の中国人の海上民兵が日々、違法操業で合計240トンの漁業資源を奪っているとの推計を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑

ワールド

再送イスラエル軍、ラファ空爆 住民に避難要請の数時

ワールド

再送イスラエル軍、ラファ空爆 住民に避難要請の数時

ワールド

欧州首脳、中国に貿易均衡と対ロ影響力行使求める 習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 6

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 7

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 10

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中