最新記事

不動産

韓国ソウル、マンション平均価格が9億ウォン突破 全国でも9カ月で25%も上昇、文政権への怒り広がる

2021年4月12日(月)11時44分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

賃貸もとんでもなく高い保証金が必要に

もちろん、マンションや家は高い買い物であり、すべての人が購入できるわけではない。その場合、賃貸物件に住むわけだが、韓国の場合たとえ賃貸であっても高い保証金が必要となってくる。これは、退去時にほぼ全額返ってくるとはいえ、日本の保証金よりも高額であることが多い。

筆者が10年前に住んでいた市内の小さなワンルームマンションは、保証金100万円を入居時に一括払いし、さらに毎月家賃を払っていた。今ならもっと保証金は上がっているだろう。

このままでは、韓国男性は新居の準備ができず、結婚できないのではないか?と心配になるが、最近ではその新居に対する常識も、若い世代を中心にだんだんと変わりつつあるようだ。

結婚斡旋会社ガヨンが、25歳から39歳の韓国人男女を対象に行った調査によると、結婚費用について66.9%の韓国人が「(男女関係なく)お金に余裕のある方がより出せばよい」という回答をした。さらに、2番目に多かった回答は「平等に半分ずつ出す」26.7%であり、「家は男性が準備し、女性は家財道具を準備すべき」と答えたのはたったの5.4%という結果となった。このように、不動産問題は韓国人の結婚に対する認識に大きな影響を与えている。

大統領選の前哨戦で与党は惨敗

また、先日行われた韓国2大都市・市長選挙での結果も、韓国のマンション価格問題を大きく反映した結果となった。

7日投票が行われたソウル・釜山両市長選挙では、文大統領率いる与党(共に民主党)が大敗する幕切れとなった。今回の選挙では、不動産政策も大きな争点になっていたのだが、2017年文大統領が当選した際の公約の一つだった「住宅を手に入れやすくする」という国民との約束が、逆に価格高騰を続けるという形で裏切ってしまった結果だろう。

さらに、先月韓国の宅地開発を担当する韓国土地住宅公社の職員らが、光明市と始興市の土地開発予定地を、公表前に投機目的で購入していた問題も発覚し、国土交通省の職員の家宅捜索も行われたのは記憶に新しい。

昨年、世界をアッと言わせ韓国映画の存在を一気に世界に知らしめた映画『パラサイト 半地下の家族』では、住むところで貧富の差を映像ではっきりと見せつけた。特に「半地下」というキーワードがよく紹介されていたが、「9億のマンション」も「半地下」も、どちらも今の韓国の現実なのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は小反発、FOMC通過で 介入観測浮

ビジネス

国債買入の調整は時間かけて、能動的な政策手段とせず

ワールド

韓国CPI、4月は前年比+2.9%に鈍化 予想下回

ビジネス

為替、購買力平価と市場実勢の大幅乖離に関心=日銀3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中