最新記事

新型コロナウイルス

アストラゼネカ製「ワクチン禍」は意図的なフェイクニュースか?

Poland Official Calls AstraZeneca Scare 'Planned Disinformation' As Europe Divides Over Shot

2021年3月17日(水)18時33分
ナタリー・コラロッシ
新型コロナウイルス アストラゼネカ製ワクチン ウクライナ

欧州に広がったワクチン・パニックの正体は何なのか(写真はアストラゼネカ製ワクチンを用意するウクライナの医療従事者) Gleb Garanich-REUTERS

<ポーランド首相府長官は、欧州17カ国に広がった接種停止は「計画的な偽情報キャンペーン」ではないか、と批判。淡々と接種を続ける国もある>

ポーランドのミハウ・ドボルチク首相府長官は3月16日、アストラゼネカ製ワクチンの安全性をめぐって欧州に広がる懸念について、「計画的な虚偽情報キャンペーン」の結果と考えられると述べ、ポーランドは今後も接種を続けると語った。

欧州諸国でアストラゼネカ製ワクチンの接種を一時停止する動きが3月10日から1週間で少なくとも15カ国に広がっていることに対する発言だ。関連性はまだわからないが、接種後に血栓ができ、なかにはそれで死亡した事例が報告されたためだ。

ユーロニュースの編集者によればドボルチクは、「(アストラゼネカの)ワクチン接種を一時的に中断している国のほとんどは、メディアのセンセーショナルな報道によってパニックに陥っている」と述べた。

「私の見るところ、我々は現在、計画的な虚偽情報キャンペーンと、メディアの野蛮な扇動に直面している可能性があると思う。疑惑を煽るメディアは、本国政府の支援を受けている可能性もある」とした上で、アストラゼネカ製ワクチンの接種を中断した国々も、「すぐに接種を再開するだろう」と付け加えた。

さらに、ポーランド政府がなんらかの決断を下すとすれば、それは科学者と医師が提供する「確かなデータのみに導かれるだろう」と述べた。

イギリスのアストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発した問題のワクチンは、2020年12月にイギリスで使用が承認され、翌月には欧州連合の27の加盟国でも認可された。

科学的根拠より恐怖が先行

しかし2021年3月16日時点で、17の欧州諸国がアストラゼネカ製ワクチンの接種を中断している。接種によって、「血栓塞栓症」につながる危険な血栓が生じる可能性があるとの報告を受けてのことだ。

これまで欧州連合(EU)とイギリスで接種を受けた1700万人超のうち、血栓が報告されたのは37人。また、イタリアでは接種後に突然死した事例も複数発生しているが、そうした事例がワクチンに直接関係しているかどうかはまだ確認されていない。

アストラゼネカ製ワクチンの接種を中断または中止した国は、オーストリア、デンマーク、エストニア、フランス、ドイツ、アイスランド、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ルーマニア、スロベニア、スペイン、スウェーデンの17か国だ。

BBCの報道によれば、接種を継続しているのはポーランドのほか、ベルギー、チェコ、ウクライナだ。

世界保健機関(WHO)、欧州医薬品庁(EMA)、英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)などの多くの保健当局は、アストラゼネカのワクチンと血栓形成の関連性を示す証拠はないと強調している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官「適切な措置講じる」、イスラエル首相らの

ビジネス

日産、米でEV生産計画を一時停止 ラインナップは拡

ビジネス

トヨタ、米テキサス工場に5億ドル超の投資を検討=報

ワールド

EU、ロシア資産活用計画を採択 利子をウクライナ支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル写真」が拡散、高校生ばなれした「美しさ」だと話題に

  • 4

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 5

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 6

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中