最新記事

中国

習近平の「鄧小平への復讐」――禁断の華国鋒主席生誕百年記念行事挙行

2021年3月16日(火)11時17分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

華国鋒や習仲勲の失脚を含め、鄧小平が行ってきたあらゆる陰謀に関しては拙著『習近平  父を破滅させた鄧小平への復讐』で詳述した。

華国鋒生誕百周年記念座談会

今年2月20日、北京の人民大会堂で華国鋒生誕百周年記念座談会が開催された。中共中央政治局常務委員会の内の中央書記処書記・王滬寧や国務院副総理・韓正などが出席した。座談会における華国鋒を礼賛するスピーチの内容も大胆に踏み込んだものだ。

この模様は中国で大きく報道され、たとえば中国共産党新聞網中央テレビ局CCTVの文字版あるいは中国共産党機関紙「人民日報」の動画サイトなど数多くのサイトで、今も確認することができる。これ等の報道から、鄧小平の禁を破って、遂に堂々と華国鋒を肯定する段階に入ったことが見て取れる。

習近平は、父・習仲勲を破滅させた鄧小平に復讐している

1962年に失脚させられて以来、習仲勲は16年間も牢獄生活や軟禁状態を耐えてきた。写真にあるように罪人として市中引き回しの目に遭い、批判大会で罵倒や暴力も受けてきた。

endo20210315221201.jpg
罪人として市中引き回しされる習近平の父・習仲勲

1978年2月にようやく政治復帰して広東省で深センなどの「経済特区」を建設し、華国鋒とともに「対外開放」に命を注いだ。鄧小平は華国鋒が実施した「対外開放」を「改革開放」と言い換えただけで、改革開放の先駆けは華国鋒が実行し、広東省の経済特区は習仲勲が汗と泥にまみれながら創っていったものだ。

だから習近平は2012年に中共中央総書記になると、まず最初に深センの視察に行った。それくらい習仲勲の功績にはこだわっている。

しかし、ストレートに習仲勲を讃えるわけにはいかないし、鄧小平が自ら「鄧小平神話」を創り上げて、それが通念となってしまっている以上、鄧小平を正面から否定することもできないにちがいない。それがこのような華国鋒礼賛へとつながっていることは間違いないと見ていい。華国鋒は習仲勲の非常に良い仕事仲間で二人は仲も良かったのだから、なおさらだろう。

2月20日に挙行された華国鋒生誕百周年記念座談会を、なぜ今ごろになって取り上げるかというと、実は3月14日付けの【中国ウォッチ】故華国鋒主席を利用、習氏への忠誠要求 生誕100年座談会の党指導者演説という記事を発見したからだ。

実は私自身は2月21日に座談会が挙行されたことを知ったのだが、そのときは、まさに『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』のゲラ修正に没頭している最中で、字数を削るのに必死だった。そんなわけで拙著に盛り込むことができなかったのを悔やんでいたところに、この記事を発見したのである。

記事をお書きになった時事通信社解説委員の西村哲也氏はよく勉強しておられて中国問題に造詣も深く、筆も抑制的で尊敬に値する。ただ惜しいことに、習近平の父・習仲勲を失脚に追いやったのが鄧小平であったことはご存知ないのではないかと推測される。

この事実を踏まえた上で、論理を展開して下さることを楽しみにしている。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版予定)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中