最新記事

米中対立

グアムを「州に格上げ」して中国に対抗せよ

Counter China by Making Guam a State

2020年10月19日(月)18時00分
エイク・フライマン

グアムのアンダーセン空軍基地を飛び立つB-2爆撃機  U.S. Air Force/Airman 1st Class Gerald Willis/REUTERS

<地域の安全保障秩序の礎となっているグアムを正式なアメリカの州とすることで、「太平洋の大国」としての立場を守れ>

9月、米民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、11月の選挙で民主党が上院の過半数を獲得できたあかつきには、アメリカの自治領プエルトリコや首都ワシントン特別区の州への格上げを含む「あらゆることが議題に上る」と述べた。もしそうなら、グアム島および北マリアナ諸島に住む23万人のアメリカ国民についても連邦議会は議論すべきだろう。

民主党だけが州への格上げ提案をしているのではない。グアムと北マリアナ諸島が1つの州になれば、究極の接戦州になる(州への昇格の第一歩としてグアム島と北マリアナ諸島を合併させる問題については過去に何度も住民投票が行われ、賛成多数の結果が出ている)。プエルトリコと同じく、グアムの住民は大統領選挙への投票はできないが、法的拘束力のない世論調査は行われている。過去10回の大統領選(当選したのは民主党候補が6回、共和党候補が4回)のうち、8回でグアムでの支持率トップの候補と実際の勝者が一致した。グアムが州に昇格すれば2人の上院議員と1人の下院議員、そして3人の大統領選挙の選挙人を選出することになるが、その程度でワシントン政界の微妙な党派バランスが大きく変わることはないだろう。とはいえ、超党派の動きや、穏健な政治や歩み寄りに向けた余地が広がる可能性もある。

「遠くて小さい」が州昇格の障害に?

グアムの州昇格の障害になりそうなのが、人口規模やアメリカ本土との距離の問題だ。現時点で人口が最も少ないのはワイオミング州だが、グアムと北マリアナ諸島の人口は合わせてもその半分にも満たない。だが過去には、アラスカのように人口が少なくても州への昇格の障害にならなかった例もある。

アメリカ人でもグアムおよび北マリアナ諸島の場所が分からない人は少なくないかも知れない。アメリカ本土から見ると太平洋を挟んだ反対側にあるし、距離で言えばホノルルより北京の方が近い。とは言え、住民がアメリカ国民であることに変わりはない。地理的な距離ゆえに、他の州にはない戦略的な重要性もグアムにはあるし、同様に他の州にはない危険にもさらされている。

グアムは米西戦争を経て1898年にアメリカ領となった。そして1941年12月8日、真珠湾攻撃の数時間後に日本に占領された。3年後、連合軍はグアムをはじめとするマリアナ諸島を奪還。作戦に参加した12万8000人の米軍兵士のうち、死者・行方不明者は8125人に上った。

だが彼らの犠牲は無駄にはならなかった。解放されたマリアナ諸島に米軍は飛行場を建設。ここから日本本土への空襲が行われ、第二次大戦における連合軍の勝利を確たるものにした。それ以降も、中国の軍事戦略への警戒感を背景に、グアムの米軍基地は地域の安全保障秩序の礎となってきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ6連騰、S&Pは横ばい 長期金利

ビジネス

エアビー、第1四半期は増収増益 見通し期待外れで株

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、金利見通しを巡り 円は3日

ビジネス

EXCLUSIVE-米検察、テスラを詐欺の疑いで調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中